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エピローグ

 マッカーサー達が奪った船を取り戻し、意気揚々とポート・ジャクソンへ帰還したカイルだったが、そこで残念な報告を聞くことになる。


「艦長、軍団が保有していた輸送船を海賊どもに一隻奪われました」


 カイル達がマッカーサーを全力で追いかけている間にアン達海賊達には逃げられた。


「けが人は?」


「乗っ取られる時、縛りあげられた数名がおりますが全員軽傷、死者はおりません」


「盗まれた船の積み荷は?」


 死傷者がいなかったことにカイルは安堵して、損害を落ち着いて聞いた。


「金や酒などです」


「まあ良いだろう」


「追いかけて奪回しないのですか?」


「追いかけても逃げられる。今頃海の遙か彼方だ」


 マッカーサー達とは違い、彼らは船を操るのが巧みだ。

 盗まれた船はともかく、海賊船と合流されると速力は向こうの方が早いため、追撃に何日もかかってしまう。

 捕獲するとなると戦闘になる。損害が出て船を失うのは避けたい。

 カイルの役目は船団の護衛と巡察使の警備であり、海賊の討伐ではない。

 離れている間に襲撃されたら、船が損傷して本国に帰還できない方が問題だ。

 それにアン達は逃げるために奪っていった、マッカーサーに奪わせたのだろうが、結果的にマッカーサー達を捕まえる事が出来た。

 広い大陸で追いかけっこするより、海の上で捕らえる方がカイル達には楽だった。

 むしろ短期間で事件のけりが付いた事に感謝したい。


「ここでは金より農具の方が重要だ」


 疲弊した植民地を再建するためにも船団が積み込んできた農器具を上陸させる方が重要だ。

 金など、植民地の経営が軌道に乗ればいくらでも稼げるのだから。


「それより大変な事が多い」


 総督の殺害疑惑、流刑囚への過度な虐待、原住民の虐殺、規律違反、職務怠慢など様々な問題があるニューアングリア軍団はウィリアムの権限によって解体された。

 兵士達は囚人として労働刑に、マッカーサーも同じく労働刑を命じられている。

 しかし彼らが統治を行っていたのは事実であり、変わりの統治機構と責任者を任命する必要がある。

 そのためにオブライエンを総督代理に任命して統治を任せるため任命式をこれから行わないといけない。

 物資が欠乏しているが、権力者が代わったことを植民地の人々に印象づけるために必要な事だ。

 スマホもインターネットもないこの世界で、式典というのは宣伝のために必要であり、欠かすことが出来ない。


「それらは略式で終えるから出港準備を頼むよカイル」


「良いのか?」


 だが、いくら功績を立てたからといって流刑囚を総督代理に任命して統治を任せるのは危険だ。


「大丈夫だよ。敵に回すと恐ろしいけど、味方だと頼りがいがあるよ。それに義理堅いし」


「そうだけどな」


 オブライエンはああ見えて義理堅いし頭が良い。

 カイル達が捕まった時、オブライエンには様々な選択肢があった。捕らえたカイルをエオラ族に引き渡したり、マッカーサーとの交渉材料にする事も出来たはずだ。

 にも関わらずカイル達と約束を結び、今も守ってくれている。

 そして面倒見も良い。


「オラオラ! サボってんじゃないぞ! 力入れろ!」


「な、何で私が」


 重鋤車を牽かせているマッカーサーの動きがとろいのでオブライエンが活を入れている声が響いてきた。


「流刑囚だからだ! それに早く畑を耕さないと秋までに収穫できない。皆で力を合わせなければ生きていけない! そこに身分は関係ない!」


 マッカーサーと並んでロープを引っ張る姿は馬車馬のように力強く頼もしい。

 馬が少ないのはニューアングリア軍団が持っていた馬の殆どは人を乗せるための軍馬で速く走ることは出来るが、重い馬車を引っ張るのが苦手だ。

 そのため人間が引っ張るしかない。

 あちこちで同じような光景が広がっているが、なかなかにシュールだ。


「オブライエンさん。エオラ族の人たちが来ました」


「おう、ナイフや鏃の購入と土地確定の相談だな。すぐ行く。おい、お前らサボるんじゃないぞ」


 開墾をマッカーサー達に任せてオブライエンはエオラ族の代表団の元へ行く。

 エオラ族もオブライエンの姿を見ると喜んでおり会話が弾んでいるようだ。

 元々、ニューアルビオンの植民地でリーダーをしていただけあり原住民との付き合い方も心得ているようだ。


「本当に得がたい人材だな。これなら問題ないだろう」


「本国にもそう伝えるよ。だから帰還する船団の編成と航海計画を頼むよ」


「了解しました」


 カイルはそう言って早速帰還計画を立てた。

 南に向かってから強い西風を受けて本国に帰る算段だ。

 嬉々として船を回り帰還する計画を立てていった。


「しかし、本国の連中は認めるのかしら」


 ウィリアムの話を聞いていたレナが尋ねる。


「認めるんじゃないのか? 討伐しようにも無理だし」


 海の果てとも言える場所に位置するこの植民地へ懲罰部隊を送るなど、到達できるかどうかも怪しく無謀だ。

 到達できたとしても、相手はオブライエンであり、ニューアルビオンのゲリラ戦の再来になる。

 そうして掃討しても植民地経営は、また一からやり直しだ。

 ならば現状大人しい状況を利用するしかない。


「でもウィリアムが糾弾されるのでは」


「確かにね」


 巡察使の権限の範囲で行っているが明らかにやり過ぎだった。

 植民地に手出しが出来ない分、本国の追及はウィリアムに集中することになる。


「まあ、できるだけ援護するさ。出航用意だ」


「アイアイ・サー」


 レナは準備のためにカイルの元をあとにした。

 カイルも本国へ帰還するために、準備に戻った。

とりあえず一区切りです。

途中長い中断を挟んで申し訳ありません。


次は鉄道英雄伝説の再開を予定していますので、ご愛読いただければ幸いです。

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