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異界狩日誌  作者: サイダー・サイダー
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3話ー第4の存在ー

美しい港町、ルカランガラは、突如凶暴化したラパーンとリモによって壊滅状態となっていた。


2体に触発されたのか、別のリモやラパーンも暴れ回り、街は滅茶苦茶になっていた。


「うわー!助けぇー!!」


サソリに近い姿をしたラパーン。テリエヴィアの毒針が腰を抜かした男の喉元に迫る。


「ドラート!」

「ダメだ!間に合わん!」


それに気付いたリラが叫び、ドラートが走り出すも最早間に合いはしなかった。


「RAPAAAAAAAANNNNNNN!!!」


次の瞬間、激痛に声を上げたのはテリエヴィアだった。テリエヴィアの体は炎で燃え上がる。しかし、テリエヴィアは痛みこそ感じれど、耐熱耐炎に優れた甲殻と肉質を持っているため炎をものともせず男の方へと向き直る。

テリエヴィアの視線は、男の後ろに立つ少女を睨んでいた。


「アレス!」


リラが声をかける。アレスと呼ばれた少女のリラの方を振り替える。アレスはリラを睨むと、すぐにテリエヴィアに向き直った。アレスの姿は、形こそは人なれど、黒い甲殻に包まれた赤い肌に翼膜の無い大きな翼、白目と黒目の反転したモンスターアイズ。3本の指が前に、1本の指が後ろになった足。ラパーンと比べれば、アレスの方がよっぽど異形な姿をしていた。


この世界において、人類とは最も弱く、最も低級な種族である。その人類の他には、大きく三つの種族が存在している。

一つはリモ。姿は人とは程遠く、正しく怪物と言える生物である。(詳しくは[補足]で)

もう一つはラパーン。姿は人にとても近く、人形種ともなれば、人との見分けはつかなくなる。(詳しくは[補足]で)

そして、キュエル。リモ、ラパーンと異なり、無条件で人類に味方する唯一の親交種族である。姿もまちまちで、人型のものも居れば、龍や虎のようなものも居る。(詳しくは[補足]で)


テリエヴィアが吠え、毒針のついた長い尻尾を振り回し、足で地面を叩く。


「戦闘の邪魔です。逃げてください。」


少女は男性を逃がすと、身を屈めて向かってくるテリエヴィアに向き直る。


「これは囮」


肩まで迫った毒針を少女は敢えて受ける。すると、少女のすぐ横から巨大な鋏が地面を抉りとって現れた。そのまま地面からは別のラパーンが現れる。


「やっぱりでしたか」


少女はテリエヴィアの尻尾を掴み、もう一体のラパーンに投げつけふっ飛ばす。

二体のラパーンは家屋にぶつかり砂埃に呑まれる。


テリエヴィアは基本単独での行動はしない。マキリヴィアという大鋏を携えたラパーンと必ず行動を共にする。

テリエヴィアの地面を叩く行動には、マキリヴィアに合図を送る意図があった。


「RAAAAAA!!!」


砂埃の中からマキリヴィアの眼光が光る。煙の晴れた先には、テリエヴィアに肩車され両腕の大鋏を振り上げたマキリヴィアの姿があった。


「RAAAAAAPAAAAAAAAAANNNNNNNNN」


猛々しい咆哮と共に、二体のラパーンが少女に向かって突進する。


「貴方達だけに構っていられるわけでもありませんので」


少女が右手をかざす。風が逆巻き右手に力が集約される。


「母なる自然の大いなる力よ、私にその一端を授けたまえ」


そう呟くと、右手から炎のようなエネルギーの渦が放出された。

しかし、それは、炎のように生温いものではない。触れたものを熔かし、呑み込む大地の怒り。マグマなのだ。

放出された煮えたぎるマグマは、テリエヴィアとマキリヴィアを呑み込む。奥の家が熔け、倒壊する。

テリエヴィアとマキリヴィアは、正しく跡形もなく消滅していた。


「相変わらず強いなぁ、アレスは」


リラが手をひらひらと振りながらアレスに近寄る。


「他のラパーンは、天征王種や陸征王種はどうしたんですか」

「そうそう。それなんだけど、なんか急に大人しくなってさぁ。全員どっか行っちゃたんだよねぇ」


「?」


リラ曰く、暴れ回っていたラパーンやリモは、突然大人しくなるとあっという間に街から去っていったらしい。

ドラートも合流し三人で話していると、アレスが助けた男性が走って向かってきていた。


「あぁ皆さん! まだいらしたんですね! よかった!」

「うむ、どうかしたのか?」

「はい。ギルドマスター殿が、今回の件の鎮静に尽力してくださった狩人の方々にお礼をしたいとの事ですので……」


男性は三人の顔を順繰りに見る。


「…分かりました、向かいましょうか」

「あ、私らは行かんよ? つか、行けんよ?」


アレスは男性の申し出を承諾したが、リラが首を横に振る。


「何か、問題が…?」


男性がおずおずと質問する。

リラとドラートは顔を見合わせる。

二人は再び男性の方を向き直ると、リラが口を開いた。


「だって私ら、御宅の最高職に追放されたんだから」



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