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異界狩日誌  作者: サイダー・サイダー
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1話ー怪物ー

[第一章:リモという異形]


 鬱蒼と木々の生い茂る森の中を、二人組の男女が走り抜けて行く。


 瞬間、一本の大太刀を担ぎ、緑色の鎧に身を包んだ女性が大太刀を引き抜き素早く体を捻って振るう。


 ガキィン


 大太刀は異形の怪物の振り下ろした両腕の鋏を受け止め火花を散らす。


「RUIIIIIMOOOOOOOOOO!!!!」


 怪物の怒声が森中に轟く。筋肉は隆起し赤黒い甲殻を押し上げる。身体中に走る樹形の幾何学模様はさらに輝きを増し、蒼く、爛々と輝きだした。


 口から漏れる怪物の息は、血の臭いと腐臭の混じった激臭を放っている。


 怪物の名前はリモ。その中でもザリモと呼ばれる生き物だった。


「RUIIIAAAAAAA!!!!」


 ザリモの長いムカデの様な下半身がうねり、ザリモが後退する。

 そして身を捻って穴を掘り、その巨体を土の中に押し込む。


 女性が大太刀を振り抜くも、その(きっさき)はザリモに触れること無く空を切る。


「RUUUUUU……OOOOO……」


 地中に身を潜めたザリモの声が木霊する。やけに生温い風邪が木々をざわめかせる。


 それは突然だった。


 次の目標を全身を真紅の鎧で包んだ厳めしいランス使いの男に定めて、ザリモが怒声と共に姿を現したその瞬間。ザリモが攻撃を繰り出すよりも遥かに速く、ザリモは攻撃を受けていた。


 どこからか飛んできた炎の塊を真横から直撃したザリモは、木々を薙ぎ倒し地面と水平にぶっ飛んで行く。


「リラがやったのか?」

「いや、私は何も…」


 二人が話していると木の上から犬とも鳥ともつかない、ザリモとは別の怪物が降りてくる。


 怪物の名はウィンリモ。ザリモと同じリモという種族に分類される生き物だ。ザリモ同様、身体中に樹形の幾何学模様が走っているが、それ以外は似ても似つかない姿をしている。


 模様が紅く光り、ウィンリモが体を震わせる。首回りの剣のような鱗がカシャカシャと乾いた音を立て、地面には光沢のある鱗片が散らばっていく。


 これはウィンリモの威嚇行動だ。


 翼と一体化した前足を地面に下ろし、長めの首を持ち上げ、尻尾を地面に叩き付けて咆哮する。


「RUIIIIIIII MOOOOOOOOOOOO!!!!!!!!!!!!!!」


 ウィンリモは上空へと飛び上がり、滑空しながらザリモの方へと向かって行く。


 やっとこさ身を起こしたザリモも、向かってくるウィンリモの姿を捉え、先の攻撃のお返しをせんとばかりに怒号を上げて体を持ち上げる。




 軽く狙いを定めるような動作を取ると、ザリモの目の下から液体が勢い良く飛び出した。


「RUIA?!」


 ウィンリモは咄嗟に避けようとするも時は既に遅し。顔に直撃し敢えなく落下した。


 ウィンリモの顔からは煙が上がり、顔のパーツが少しずつ溶け出していく。


 液体の正体は溶解液だった。


 顔の溶ける激痛にウィンリモは悲痛な叫びを上げる。


 顔を地面に打ち付けてもがき、何とか痛みを和らげようとするウィンリモに、最早勝利を確信したかのようにザリモが近寄る。


「RUOOOOO!!!!」


 両腕の鋏を振り上げ、ウィンリモの頭部に叩きつける。


 顔の激痛が治まり、ウィンリモは動かなくなった。


「RUIIIIII MOOOOOOO!!!!!!!」


 青い血の付いた鋏を掲げ、ザリモは勝利の雄叫びを上げる。

 そしてすぐに標的を二人の人間に移す。


「RUOOOOO GA?!!?!?」


 威嚇の咆哮をするザリモの脳天を、一本の矢が貫く。


 ザリモは青い血を頭から吹き、地に倒れ付した。


「矢…。次はラパーンのお出ましか」


 真紅の鎧の男が矢の飛んできた方を見る。


 そこには長い金の髪を風になびかせ、殆んど布の面積など無いような服に身を包んだ、暗い森には不釣り合いな少女が居た。



 正しく美少女というのが相応しい少女










 その下半身は蜘蛛だった。

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