[少女と老人]
[少女と老人]
・・・
コツコツコツ。
ぱたぱたぱた。
気づくと二人の足音が聞こえた。
不意に目線を正面に戻すといつの間にか
目の前に小さな少女と杖のついた老人が立っていた。
二人は僕の無様格好を見ても驚きはしなかった。
少女が話しかけてきた。
「おじちゃん大丈夫?」
僕は、声にならないくらいの小さな声で答えた。
「大丈夫じゃないな」
少女は、今度は老人に話しかけた。
「じいじ、大丈夫じゃないって。」
老人は無言でうなずいた。
僕は面識もないその老人になんとなく問いた。
「僕は死ぬのか?」
老人は無言で首を横に振った。
そのなんの根拠もない返答に僕は安堵した。
たとえ死ぬとしてもその答えを待ちわびていた。
少女が話しかけてきた。
「どっか痛いの?病気なの?」
突拍子もない言葉に老人は少女を止めるでもなく、僕の目を見据えていた。
僕は答える代わりに腹に手を当てた。
老人が初めて口を開いた。
「生まれつきじゃな。」
僕はその言葉に驚いて老人を見返した。
そんな驚く僕は他所に、少女が老人の目を見て話しかけた。
「じいじ。おじちゃんお腹痛いって!治してあげれば」
その言葉に僕はつい
「あなたは医者なのか?」
老人は静かに首を横に振った。
老人は少女を見据え頭を撫でた。
そしてこう答えた。
「そうじゃのう」
「これでお前を助けることができそうじゃ」
しわくちゃな優しい笑顔で少女を見つめた。
老人はそう言うと僕のそばに寄ってきた。
そして僕の腹に手を当てた。
老人が笑顔で言った。
「お主、ようがんばったのう。」
そういった途端、老人の手は陽だまりのように輝いた。
輝きは一瞬で消えた。
さらに、頭に手をやり老人は呟いた。
「後は、お主に任せる。」
「生きる糧としなさい」
言ったと同時に今度は水色の発光が頭を包んだ。
僕は老人の言っている言葉が理解できなった。
その間に目の前は真っ白となり、そのまま闇の中に僕は飲み込まれていった。