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手当て “GOD HAND~奇跡の力~”  作者: さじかげん
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【右手をおでこ】

【右手をおでこ】


ガタンゴトン。ガタンゴトン。

僕は出勤中だ。


土曜のデートとあの事故のお陰で精も根も果て

日曜日は寝るか食べるかで時間が過ぎ去った。


会社があるといっても気は滅入ってなかった。

正直、休日より仕事のほうが楽なことに気づいたからだ。


休日というより、女性との付き合いが大変なことがよくわかった。


いつも駅を降りて、

いつもの会社に着いた。


「おはよう」


僕はいつものように挨拶して自分の部署に入った。



が部署はいつもの感じではない。



僕が入った瞬間、先に来ていた部署の人たちが一斉に僕の方に向いた。


(え!?何)


一瞬身を構えた。


その時、僕の姿を見た彼女がまるで犬のように寄ってきた。

前田雫だった。



前田雫「しゅに~~~ん!おはようございます!

    土曜日はデート楽しかったですねー!」



周りがさらに驚いた表情をしている。

若い衆の痛い目線が僕に突き刺さる。


「いや。。デートっていうかお礼と言った方がいいんじゃないかな?」


僕は苦し紛れな言い訳をしていた。


前田雫「またまた~~デートですよ!また約束通り今度行きましょうね!」


そう言って僕の周りのちょこちょこと動き回っている。


(は~~。)


僕はもうあきらめたように右手をおでこに当てた。


(この子は、自分がどれだけ魅力があるかわかっていないな。これは恨まれるだろうな僕は…)


そんなことを考えていたが、気分を取り直し先ほど気になっていたことを聞いてみた。


「前田君、みんなが騒がしかったけど何かあったのかい?」


前田雫「あれ?主任知らないのですか?」


そう言って他の社員が持っていた新聞を僕に渡した。


新聞1面を見ると、そこにはデカデカと土曜日の事故のことが掲載されていた。


「あ~おとといの事故のことか。大変だったもんな。」


僕は一昨日の出来事が脳裏によみがえった。


前田雫「そうなんですけど。これです。これ。」


そう言って彼女が指した記事の写真を見た。


そこには僕がデカデカ写っていた。


(え?なんで?なんで僕なの?)


僕は意味がわからなくて前田雫の方を見た。


「なんで俺なの?」


僕の顔を見て悟った彼女は記事を要約して説明してくれた。


事故で多くのけが人が出たのだけど、現場で率先して救助に当たっていた僕と女性医師「藤川清美」のお陰で事故現場は大混乱に陥らなかったこと。


そして、救急処置が素晴らしく命が救われたもの、重症にならなかったものが多数いたことが書かれているようだ。


この救助は藤川清美のインタビューにより僕の功績が大きかったと話されていた。


前田雫他周りの同僚達が僕を囲い、それらのことについて褒めたたえていた。


前田雫「主任すごいですね!あの日こんなことになっていたんですね。すごい!すごい!」


前田雫の目は完全に目の前に餌を出された犬のように目がキラキラしていた。


「いや、俺はそんな大層なことはしてないんですよ。本当に、少し手伝っただけですって!」


僕は誇大されていく話の内容に怖くなって来ていた。



僕は、右手をおでこに当てた。今日二度目である。



ざわついていた部署内に課長が出勤してきた。


「おはよう!お前たちもう就業時間になっているぞ。何を騒いでいるんだ?」


そう言って社員たちがいる方に顔を向けた。


その中心に僕がいることに気づいたようだ。


「ああ…大木君の件か…まあしょうがないな。」


そう言って課長は自分の席に荷を降ろした。


そして、手を軽くたたき


「朝礼をするぞ、みんな席に戻って!」


僕を囲っていた同僚達はそれぞれ席に向かって戻っていった。



その時、課長の電話が鳴った。


「もしもし…おはようございます。…はい…はい。わかりました。すぐに向かわせます。はい。それでは失礼いたします。」


課長は手短に電話済ませた。


「大木君!」


「はい!」

急に呼ばれて少し声が上ずってしまった。


「朝礼はいいから、至急社長室に行ってくれ!」


同僚の目がまた一斉に僕に集まった。


「…はい。わかりました。」


僕は急いで部署を出ようと早足で歩きだした。


その姿を見て、課長は僕は呼び止めた。


「大木君!」


「はい!」

僕は足を止め、課長に振り返った。


「いいことをしたね!焦らないでいい。胸を張っていきなさい。」

課長は優しい笑顔で言った。


僕はなんだか優しい気持ちになった。


「はい。ありがとうございます。」



僕は部署を出て、社長室に向かった。


僕は右手をおでこに当てた。今日三度目だ。


(なんだかな…僕は普通に仕事がしたいんだけどな…)


そんな思いは届かないことには今の彼には知る由もなかった。

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