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手当て “GOD HAND~奇跡の力~”  作者: さじかげん
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[デート]

[デート]



僕は一宮仁と別れ、家路についていた。


少し足取りが重かった。


次の難関、前田雫が待ち構えているからだ。


明日の土曜日デートの約束をしていたのだが、

前田静からの連絡を全てすっ飛ばしていたからだ。


(女は怖いぞ。)


そんな一宮仁の言葉を思い出し、背筋がぞっとした。


家に着くと、すぐにシャワーを浴びた。


時刻は既に0時を回っていた。


(どうしてこんな思いをしなければならないんだ)


そんな思いを胸に一呼吸してから前田雫に電話掛けた。


案の定すぐに電話に出た。


相当お怒りの様子だったが、電話をしたことと

明日の事を覚えていたことでそんなに責められることはなかった。


「じゃあ明日必ず来てくださいね。

私はすごい楽しみにしていたんですから。」



そう言って電話を切られた。


「僕は不安しかないけど…」

つい本音を呟いていた。



Tシャツとパンツの姿で頭を乾かしていた。


「あっ!」


ふと思い出した。


そういえばちさとちゃんの事故の件で服を買うことを忘れていた…


僕は途方にくれた。


いまさらどうすることもできなかったので

普段の格好の中でも自分が持っている一番新しい服を選んだ。


(まあ、前田君だし。いっか。)


僕は服装に付いてはあきらめて寝ることにした。




翌朝、僕は時間通り指定の場所にいた。


渋谷駅のハチ公前にだ。


年齢的にも服装的にも

あきらかに僕だけ存在が浮いていた。


周りの若い子達から白い目で見られているのがわかる。


苦笑されている気がする…


僕はただただこの場から去りたい気持ちだった。


約束の時間から5分ほど遅れて前田雫が現れてた。


いつも見ている前田雫と違い、なんだかすごい眩しい感じがした。


(ああ。これが若さってやつだな。)


僕は、年という残酷さを知った。


そんな思いとは裏腹に前田雫は元気に笑顔で話しかけてきた。



「主任!おはようございます!

ちゃんと来てくれましたね!」


そう言ってうれしそうに腕に抱きついてきた。


周りの目が痛い。


「と、とりあえず。歩こう。」



僕はこの状況に耐え切れずに前田雫の腕を掴んで歩き出した。


「主任って結構積極的なんですね。」

そう言って前田雫は顔を赤らめていた。



(そうじゃない。)

僕は口には出さず心の中で叫び、前田雫の言葉を無視して歩いていった。


人ごみを離れた場所まで行き

前田雫の腕を話した。


大して動いたわけではないのに息を切らしていた。


そんな様子を見て前田雫は僕の顔を下から覗き込んだ。


「主任?何か疲れてません?」



「誰のせいだと思ってるんだ。」

僕は少しだけ怒った口調で言った。



前田雫は知らないような顔をして惚けていた。


「主任!でも私の夢の一つは適いました!」

そう言って人差し指を前に突き出した。


「?」

僕は意味がわからなかった。


「ハチ公の前で待ち合わせをしてデートをすることです。」

うれしそうに前田雫は笑っていた。



僕は、もう今すぐにでも帰りたかったのは言うまでもない。




僕の疲れた姿を前田雫がじっと見ている。


その目線は僕の体をなめ回すようだった。


「主任?」


前田雫は、真剣な眼差しで僕の目を見た。


「な、何?」


「服がダサいですね。」



ズサッ!何かが僕の胸に突き刺さった。


なんとも言えない重みで、まさに言葉の凶器だった。



僕は目をパチクリしていた。


続けて前田雫は言った。


「服がダサいですよ!主任。

こんなに若々しい私とデートするのにその服はないです。」




「前田君…」



ん!?とした顔を前田雫はした。



「何かいつもと違ってきつくないか?」

顔を引きつきながら言った。



前田雫は大きな声で笑った。


「主任ごめんなさい。

でも今日のデートはプライベートなので対等じゃだめですか?」


少し悲しそうな顔を見せた。


「まあ、いいんだけど…

僕は何かついていけないって言うか…」

言葉を詰まらせた。


そんな僕を見て、前田雫は僕の手を取った。


「大丈夫です!今日は私がサポートしますから!

いつも主任にお世話になっているので、今日は任せてください。」


自信満々の前田雫の顔が目の前にある。

その目はきらきら輝いているように見えた。


僕はその顔にあきらめた。


「いや…もう…任せるよ。好きにしていいよ。」



そう言うと前田雫はさらに顔を輝かせた。


「わっかりました!」

右手に拳をつくり、高く掲げた。


「じゃあ、早速主任の服を見に行きましょう!

私がコーディネートしますから!」


そう言って今度は僕の腕を前田雫が掴み歩き始めた。



(僕は今日、体がもつだろうか…)


そんな事を思いながら、母親が子を連れ添うように

僕は前田雫に引きつられていった。


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