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手当て “GOD HAND~奇跡の力~”  作者: さじかげん
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[父と娘]


[父と娘]



春風ハルは家に帰った。


もうすぐ夜中の12時を回ると言うのに父、春雄が

リビングのソファーで座った本を読んでいた。


リビングに入って父がいることがわかりハルは声を掛けた。


「ただいま」


父はハルに顔を向けた。


「おう、おかえり。遅かったな…」


「…うん」



ハルは、荷物を降ろし洗面所に向かった。

手洗いとうがいをしリビングに戻った。


「父さん。まだ起きていたんだ。」


「おう。ちょっと読みたい本があってな。」


ハルは、冷蔵庫に行き、水をコップに注ぎ飲んだ。


父の横姿が見える。


父を目で見ることができることに

まだ少し不思議な感じがした。


父は多分、私の帰りを待っていたのだろう。


私が目が不自由になってからは、母もいないこともあり

父が私より早く寝ることはなかった。


もちろん起きることも…


決して酒も飲まなかった。

私に何かあった時にすぐに行動できるように。


学生の時はそんな父が煩わしかった。

夜更かしもできず、いつも規則ただしい生活をしていた。


ハルはもう一杯コップに水を注ぎ飲んだ。


家の中を見渡す。


本当に何もない家だ。

必要最低限のもの意外何も置いていない。


手すりもあちらこちらにある。

いたる所に点字板もある…


そんな景色と父の暖かみに涙が滲んできた。


そんなハルをよそに父が話しかけてきた。


「今日は飲んだのか?」


「…うん。初めて外で飲んだ。」


「そうか。良かったな。あまり飲みすぎるなよ。」

父は嬉しそうに言った。


「父さん!」


「何だ。」


「今度、飲みに連れて行ってよ。」


父はハルに顔を向けた。

すこし恥ずかしそうな顔をした娘の顔があった。


「ははは。そうだな。それもいいかもな。

母さんも一緒に連れて行くか。」


そう言って父は飾ってある母の写真をみた。


ハルも写真をみた。

どことなく自分に似た母が笑顔で笑っている。


「…うん」


ハルは、父の前のソファーに座った。



そして切り出した。


「父さん!今日、大木さんと会ってきた。」


「!?」

父は驚いた顔をした。


父は今日大木さんと私が会うことを知らなかった。


驚いてはいたが、すぐに平静な顔に戻った。


「会えたのか?良かったな。」


「うん」


「話は済んだのかね?」


「うん。」


「父さんありがとう!」


「おう。」


「大木さんから聞いたよ…条件のこと。」


その話題を振られ、父は少し困惑した顔をした。


「父さん。本当に良かったの?私がお願いしたからだよね?」


「…ハル。まあ聞きなさい。

もちろん今回の条件はお前が一番ではあった。

それくらいおまえは切羽詰った顔をしていたし

何かがあったのだろうと思った。

そんな、みたこともない娘をみたらなんとかしてやろうと思った。

…親心ってやつだな。

実際、ハル、お前にとってはそうだったのだろ?」


「…うん。でも…」


父がそんな私の言葉を遮って続けた。


「しかし、俺も一会社の社長やっている以上、多くの社員の生活も抱えている。

いくら娘のためであっても馬鹿なことはしないつもりだ。

私もそれなりに人生を歩んできているからな会社と人を見る目はあるつもりだ。

今回取引を持ち掛けた上丸商事については十分にリサーチをした。

ただ取引ってものはやっぱり最後はそれを担当する人なんだよ。

今まで色々な取引先の人が来たが、私の目にかなう者…直感的な人物がいなかったのだ。」


「ただ…大木君は違った。何か違うもの感じた。

この人間なら託せる…そんな風に直感的に感じたんだよ。

まあ、あくまで私の主観だがね…」


父は一気に言葉を吐き出した。


「…まあ、つまりだな。安心しろってことだ。」


そう言って頭を指で掻き、ソファーに背をもたれた。




「…ありがとう。父さん。」


父は少し照れくさそうな顔をした。



「わしはもう寝るぞ。」


父は逃げるように席を立ち、寝室に向かった。


扉を開け、思い出したようにもう一度ハルに顔を向けた。



「そうだ。来週から出勤しろよ!」



「わかった。」

ハルは笑顔で言った。



「父さん!」


「ん?」


「私も大木さんのこと直感的に感じたの…」


「どういうことだ?」


「そういうことよ。」

ハルは悪い顔をして少し微笑んだ。



父は少し考え、ハッとした。


困ったような顔をしたが

「まあ、お前の好きにしなさい。…おやすみ。」



「おやすみなさい。」


そう言って父は扉を閉め寝室に行った。



ハルはソファーにもたれ掛かった。


「さて、風呂入って寝ようかな…」


そう言ってハルも自分の部屋に足を向けた。

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