表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
手当て “GOD HAND~奇跡の力~”  作者: さじかげん
6/72

[恐怖]

[恐怖]



どれくらい時間が経っただろうか。

い、痛い。

僕は痛みで再び意識を取り戻した。


痛みは弱まっていない。

ただ先ほどよりも意識はハッキリしている。

僕は自分に状態を確認しようと目を開いた。


椅子に横たわっている。

記憶にある。電車から降りた目の前のベンチ椅子だ。


口にはよだれが付いていて、その下にはよだれが溜まっている。

汗を大量にかいたらしく下着おろかシャツやズボンまでも湿っぽい。

ほろ酔い状態だったが汗で、すべてアルコールが出てしまったのかのように感じ、

そのせいか少し寒さを感じる。

意識が朦朧としたのも急激に体温が上がったのだろうと考えた。


意識が戻って間もなく嘔吐感に襲われた。

構内に人の気配はない。

僕は、体裁にこだわらず、匍匐前進で線路まで行き、顔を出した。


駅員の皆さん申し訳ない。

一言胸の内で侘びを入れ、線路内に嘔吐した。


血だった。



目を疑った。

現実から逃避するかのように僕は一度目を閉じた。

もう一度目を見開き、自分の嘔吐物を確認した。


やはり血である。

祝賀会に食べた飲食物も混ざっていると思うが

鮮血の真っ赤な色でそれすらも確認できなかった。


僕は死ぬのか。

何度かこのような状態に陥ったことはあるが吐血は初めてだ。

最近は、自分なりに体調が良かったはずなのに。


死にたくない。

こんな虚弱な体質であっても死は望んでいない。


僕は急に死に対して恐怖が襲ってきた。


痛みは弱くなったのか。

気持ち悪さが収まってきた。

多分、恐怖が勝って感覚が麻痺しているのかもしれない。


口周りが赤く、重い体をまるでゾンビ映画のように引きずり

先ほどまでいたベンチ椅子に戻り、体を背もたれに任せ座った。


どこの駅なのかさえもわからない。

構内には人気がない。

ベンチ椅子の上にある古ぼけた蛍光灯をぼんやりと眺めていた。


考えることをやめた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ