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手当て “GOD HAND~奇跡の力~”  作者: さじかげん
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[告白]

[告白]



三人は公園に着いた。


春風ハルは、無意識でベンチの所まで足を進めていた。



「ここでしたね…」


ハルはそう呟くと、ベンチに腰を掛けた。


僕は、無言でハルちゃんの横に座った。


一宮仁は、ベンチに座らず、僕らの前に立っていた。


僕は口を開いた。


「ハルちゃんは、なんでお父さんに頼んでまで僕に会おうとしたの?」



ハルは、少し間をおいてから僕の顔を見た。


「もう、会えないかもしれない…いや、会ってくれないのかもしれないと思って…」


「それはどうしてなの?」

僕はハルちゃんの目を見た。



ハルは、僕をみて、それから一宮仁の顔をみた。


春風ハルは、何か話したそうな素振りだったが、躊躇している様子だった。


僕は、一宮仁の顔を見た。


一宮仁は、黙って頷いてから口を開いた。


「お嬢ちゃん、俺のことは気にしなくていいぞ。」


それを聞いた春風ハルは、もう一度僕の顔を見た。


僕は、頷いた。



意を決してハルは口を開いた。


「私の目を見えるようにしてくれたのは大木さんですよね?」


春風ハルは、僕の目を貫くような眼差しで見た。


「…どうしてそう思うの?」


「それしか考えられなかったの。違うの…大木さんであってほしかったの。」


ハルは少し声のトーンをあげて言った。



僕はふーっとため息をついて空を見上げた。



そんな様子をみて一宮仁が口を開いた。


「お嬢ちゃん!もし仮にダイキがやったとしたらどうなんだい?」


春風ハルは、一宮仁に顔を向けた。


「お礼を言いたかった。会って直接…」



「それだけかい?」


一宮仁はさらに問いかけた。



「それだけ?」

春風ハルはよく意味がわからないといった顔をした。



「仮にダイキが治したとして、君はダイキに何を求める?」



「求めるって…私は何も…」

ハルは少し困っていた。少なからず大木さんに好意をもっていたからだ。



「もし君の親に何かあったら、君の友達が君の前と同じ状況にいたら君はどうする?

ダイキに頼るつもりかね?」



「あ!?」

ハルは、自分が思っていたことと違うことに気付いて、顔を赤らめた。

そして、今夜で顔が良く見えなくて良かった安心した。



「そ、そんなことは考えてもいなかった…」



一宮仁は、少し安心した顔をした。


「なぜ目が見えるようになったのかを問われたときにダイキの名前を出したことは?」



「…ないです。一度も。」



「親にもかね?」



「はい」



「どうして言わなかったのかね?おそらく何度も同じようなことを聞かれたと思うが…」



春風ハルは、顔を下に向けた。


「ただなんとなく…言っては、口に出してはいけないような気がして…

何より、自分が何もわかっていないのに話すことなんてできない。」



「では、わかったら誰かに話すつもりかね?」



再び春風ハルは、顔をあげて一宮仁に顔を向けた。



「話しません。絶対に…」



「それはどうして?」



「言っても信じてもらえないだろうし…何より自分の中に留めておいておきたいです。」



「そうか…確かに君がマスターや洋子さんと接しているところを見ていると

君が今言ったことはうそではないと思う。」



僕は、相変わらず空を見上げたままだったが

仁さんの言葉には納得していた。



「お嬢ちゃん!このことが世間に知られるようになったらどうなるかわかるかね?」




ハルは、どうやって答えるべきかわからなかった。



「こんな時代だからな…その者は、世間から好奇の目で見られ、調べ上げられ、

普通の社会では生きていけなくなるだろうな。命を狙われる危険性もある…」



「!?」

ハルは、ビクッとした。

自分は何も考えていなかった。

自分のことだけしか考えていなかった。


そんなことがわかったとき急にハルは怖くなってきた。



春風ハルは、何も言えず黙り込んでしまった。



僕も、うすうすはわかっていたことだったが、言葉にして改めて聞くと

背中が寒くなるように感じた。



少しの間沈黙が流れた。


公園には夜風が吹き木々のなびく音だけが聞こえていた。



春風ハルは思い空気の中、どうにか言葉を発した。



「今の…今日の話はなかったことにしてください。

大木さんと食事ができただけ本当にうれしかったです…」



春風ハルは、ベンチを立った。

この場にはいてはいけないような気がした。



春風ハルは公園出口に向かって歩き出した。



「ハルちゃん!」

僕は呼び止めた。



春風ハルは足を止めた。

そして、僕の方に顔を向けた。



「僕だよ。。」



春風ハルは、驚きの表情を見せた。



「ダイキ!」

一宮仁は、焦って声を出した。


僕は、仁さんを目で制して、軽くクビを横に振った。



一宮仁は、あきらめたように空を仰いだ。



「君の目を治したのは僕なんだ。ハルちゃん…」



「ど、どうして…」


春風ハルは少し泣きそうな顔をしていた。



「君に今日は話さなかったら、君は生涯ずっとこの時を引きずるだろう。

…僕も同じように引きずると思う。

そして多分、君はもう僕とは会わないようにするだろうね…

そんなことはさせたくないし、したくもない。」


春風ハルは、黙って僕の顔を見ていた。


「それに、勝手に治したのは僕だし。

目が見えるようになることが必ずしもいいことじゃないことも仁さんから聞いた。

僕は、ただ純粋に生きるのを楽しんでもらいたかったから治したんだ。

もし仮に今日、君が何も知らないまま帰ってしまったら、

僕が本来君にしてあげたかったことが、できないことになる…

僕はそんな自分は許せないし、許されるとも思っていない。」


僕は、ベンチを立って

ハルちゃんの前に立った。



「だから僕は言うよ。

ハルちゃん。君の目をみえるようにしたのは僕、大木剛志です。

勝手なことをしてごめんな…」



「お゛…大木さん…」


春風ハルは、涙で声にならない声で僕の名前を呼び、僕の胸に抱きついてきた。

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