[駆け引き?]
細かい流れが頭の中でイメージできていると書いていて楽しい。
[駆け引き?]
「ダイキ。公衆の面前だぞ。」
一宮仁は、やれやれといった感じで僕に声を掛けた。
周囲の人達がこちらを見ている。
なにせ若い女性が僕を倒し、馬乗りになっているからだ。
「え?ダイキ?大木さんじゃないの?」
春風ハルは人間違いをしたのかと思い、あたふたし始めた。
ただ、馬乗りの体勢は続いたままだ。
僕は、もうあきらめた感じでハルちゃんに抵抗するまでもなく、地面に倒れたままいた。
「ハルちゃん!大木ですよ…ちょっと恥ずかしいのでどいてもらってもいい?」
春風ハルは、ようやく自分がおかれている状況に気付き周りの見渡した。
周りの視線が一斉に春風ハルに向く。
「あ!?すいません…」
すぐに馬乗り状態から立ち上がり、僕に頭を下げた。
「本当にすいません。興奮しちゃって、気付いたら抱きついてしまいました。」
僕は、一宮仁の手を借りながら立ち、服の汚れを払っていた。
「おまえ、もてるなあ。」
笑いながら一宮仁は言った。
「仁さん!」
僕は、少し強い口調で返した。
僕らのやりとりを見ていた周囲の人たちは、なんだ内輪ごとかと理解し、自分たちの世界に戻っていった。
「すいません。服汚してしまって、クリーニング代払います…」
まだ、春風ハルは頭を下げながら言った。
「いや、いいって。ハルちゃん元気そうで良かったよ!」
立ち上がった僕の顔を見て、春風ハルはもう一度抱きついた。
もちろんさっきよりはやさしく。
「大木さん…会いたかったです…」
僕は、そんなハルちゃんの頭を軽く手をやった。
「そっか…」
僕は、仁さんの方を向いた。
仁は笑い、うなずいた。
「さて、お店にいこうか」
一宮仁は声を掛けた。
春風ハルは、その声を聞いてそっと僕から離れた。
そして、元気に『はい!』と返事をし、青になった信号を渡り始めた。
「あのーところでこの方は?」
春風ハルは、すこし申し訳なさそうに言った。
「俺は一宮仁だ。こいつの一応友達だ。仁と呼んでくれ。」
「仁さんですね。遅くなってすいません。春風ハルです。
大木さんとは友達以上の関係です。」
「おいおい。」
僕は勘弁してくれといった感じで受け流した。
「そうか!まあ、がんばってくれや。こいつは要塞並に固いぞ。」
「知ってますよ。私は、いろんな武器をつかって崩すつもりです。」
笑顔で春風ハルは言った。
「そりゃあいい。」
仁は笑いながら言った。
僕は、もう好きにしてくれといった感じで会話が耳に入っていないふりをした。
なごやかな雰囲気の中、三人はお目当ての『ボーノ』に足を進めた。
春風ハルは、目のことは何も言わなかった。
僕も、一宮仁も目のことには話題を振らなかった。
そもそも、僕たちは目について驚きもしなかったのだ。
三人の駆け引きはもう始まっていたのかもしれない。




