[連絡]
[連絡]
僕は部署に戻り、さしあたりないように課長にこの件に関しての社長とのやり取りを報告した。
また、事の済み次第改めて報告する旨も伝えた。
課長は、納得のいかない顔をしたが、不満を言うわけにもいかず承諾した。
署に戻ってから、前田雫はもちろんのこと、他の社員からも色々と詮索されたがうまくかわし一日の業務を終えることができた。
帰宅し、シャワーを浴び食事を終えたところでテーブルの上のメモに目を移した。
「さて、連絡しないな…」
そう一人つぶやき、春風ハルの電話番号の書かれた紙を手に取った。
…
一方、春風ハルは家でドタバタと活発に活動していた。
あの一件から会社から数日の休みをもらったのだ。
どちらかというと強制に近い休暇だったが、今ではその休みを有効に活用している。
目が見えるようになり、生活が一変した。
生活には少しずつ慣れてはきたが、今までとは比べ物にはならないほどの情報量が目から入り込んでくる。その情報を一つずつ手にとって脳の知識と合わせていった。
特に、目が見えて大きく変わったのが外観を意識するようになった。今まで生活を送る上で不必要なもの一切置いていなかった。移動など活動するときに怪我の元になるからだ。
しかし、目が見えることにより女性としての認識も強まり、可愛さ、美しさなどにも興味が出てきて、自分の顔など容姿は何度も鏡を見て確認していた。
「せっかくだからかわいい服がほしいな…」
春風ハルは、ベッドに寝転がり、近くあった服の雑誌を手に取った。
その周りにはその本の他、料理や雑貨、髪、芸能雑誌などあらゆる本が散乱していた。
ぺらぺらと雑誌をめくっていたハルは、その手を止めた。
(私って、本当に目が見えるようになったんだ…)
顔を敷いてあるクッションに埋め目を閉じて、もう一度顔を起こして周りを見渡した。
「見えるね…」
その時、テーブルの上に置いてある電話が鳴った。
「お父さんかな…」
ハルは、体を起こし、テーブルまで足を運んだ。
画面を見ると知らない電話番号が表示されていた。
(誰だろう。出たほうがいいかな。やめておこうかな…)
少しの間鳴りっぱなしの電話を眺めていた。切れる様子がなかったので意を決して
電話の通話ボタンを押した。
「もしもし…」
向こう側から男の人の声が聞こえた。
「もしもし、夜分にすいません。春風ハルさんでしょうか。」
「…はい。春風ハルです。」
ハルは、その声になんだか安堵感を感じた。
そして、いつか聞いたことのある声のようにも感じていた。
「あの、どちら様ですか。」
「ハルちゃん?僕です。大木強志です。覚えてますか?」
その申し訳なさそうな声。
その声は、ハルにとって本当に待ち遠し人の声だった。




