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手当て “GOD HAND~奇跡の力~”  作者: さじかげん
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[父と娘]

[父と娘]


足早に応接室に着いた春風ハルは入り口のドアを開けた。


「大木さんがいない…」


すると、後ろから着いてきた女性社員が言った。


「先ほども申し上げましたが、大木さんは社長の事情を察し、

お帰りになられました。これを社長にと…」


女性社員は、社長にメモを手渡した。


社長はそれを広げてみた。


(本日は、お忙しい中お時間をいただきましてありがとうございました。また、改めてご連絡させていただきます。宜しくお願いします。)


「大木君は帰ったようだ。まあ私のせいだからな、後でお詫びをしておこう。」


春風ハルは、大木さんがいないこと知ると残念がる様子を見せた。


「父さん!ちょっと二人で話があるの。いいかな?」


娘の真剣な眼差しを見て、黙ったまま頷いた。


「すまんが、しばらく席をはずしてもらえないか?

あと、私への連絡も今日はキャンセルしてくれ。」


そう女性社員に言うとすぐにわかりましたと答え部屋を出て行った。


社長は、応接室にカギを掛けた。


「これで邪魔はなれないだろう。それにしても今日は、よく父さんと呼んでくれるな。」


少し嬉しそうに笑った。


続けてハルに言った。


「何があったのか、話してくれるんだろうな?」


ハルは、その質問には答えず、父の顔をじっと見ていた。


「何か話がしたいのだろう?私からも山ほど聞きたいことがあるが、

正直、お前の目が見えることが現実に起きているだけで私は満足している。だから私からは何も聞かないことにする。」


・・・


「ありがとう」


ハルはそう一言言った。


「じゃあ話すね。」

父は首を縦にふった。


「大木さんはもともと今日来る予定だったの?」


「いや、急遽だ。前任者が私と馬が合わなくてな、代わりに来たようだ。」


「何をしに来たの?」


「営業だ。うちの新型バッテリーの専属契約を交わしたいようだ。」


「うちのバッテリーまだ世の中に出てないけどすごいもんね。」

ハルは笑って言った。


「あたりまえだ。娘同然に大切に育ててきたからな。」

そう言って父も笑った。


・・・


「契約交わすことにしたの?」


父は首を横に振った。

「世間話で終わってしまったな。だが大木君は見込みがある。

見た目はひょろっこくて穏やかだが、筋はしっかり通ったやつだった。」


父がそう褒めたのを聞いて、ハルは嬉しそうな顔を見せた。


(父、春雄はその顔をみてピンときた。)


(ハル、恋でもしたか…)


(そもそもハルと大木君の接点はなんなんだ?)


父、春雄は色々と聞きたくてうずうずしていた。

さっき言ってしまった手前、言葉を喉の奥に飲み込んだ。


「父さん!私ね、駅で転んで怪我をしたところを大木さんに助けてもらったの。」


「怪我!?どこを怪我したんだ?大丈夫なのか?見せてみろ!」

そう言って父は席を立とうとした。


「ううん、大丈夫!もう、大丈夫なの。今は・・・」


「そ、そうか・・・」

(なんだ?その腑に落ちないような答えは?)


「我慢してるわけじゃないだろうな?」


「うん、本当大丈夫だから」

そう言ってハルは笑った。


「そうか。実はな、大木君と話をした時に同じような話をしたんだ。

まさか自分の娘の話だとは思わなかった。」


ハルは驚いた顔をした。


「それで、何か言ってた?私のこと。」


「そ、そうだな。怪我をした時も冷静で、しっかりした女性だったと言っていたぞ。」


父、春雄は、大木君に娘の育て方について懺悔をしていたなんてことはとても言えなかった。


「そう…」

春風ハルは少しがっかりした。

もっと私に興味を持ってくれているのではないかと少し期待をしていた。


「私、大木さんともう一度会って話がしたい。」


「そうか。娘を助けてもらったこともあるからな。私からもお礼が言いたい。」


「でも…」

春風ハルは言葉をつまらせた。


「多分、大木さんは私と会ってくれないかもしれない。」


父、春雄は驚いた。


父の顔を見た。春風ハルは父の意を察して言った。


「訳は言えない。でも、そう思うの。」


春風ハルは、目を治してくれたのは大木さんだとほぼ確信していた。

そして、何も言わずにあの時あの場所から去った訳もなんとなくわかっていた。


「でもね。私、会いたいの。絶対に…」


父は、娘のじっと見ていた。

娘の様子を見れば、どれだけ真剣なのかが伝わってくる。


「…わかった。父さんがなんとかしよう。

今日の話はこれまでにしよう。ハル、色々あって疲れているだろう。

少しゆっくり休みなさい。大木君とのことは、また連絡する。

これは父として、社長として言っている。」


春風ハルは頷いた。

「父さん!本当にありがとう。」


何も詮索せず、

そして今にも倒れてしまいそうなほどの疲労感のあるハルは

父のその言葉に心から感謝していた。


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