[取引会社]
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僕「ここか…」
僕の目の前には、お世辞にも立派と言えない昭和のニオイを感じさせるビルがあった。
周りのビルは比較的新しく、はたからみると立ち退きから抵抗しているかのように見える。
僕「本当にここであっているのか?」
世界で注目されている製品を扱っているとは思えなかったからだ。
僕は心配になって、課長から渡された資料の住所とビル名を確認した。
どうやらこのビルであっているようだ。
本来ならば、春風ハルに案内してもらうハズだったのだが、事情が事情なだけに自力で探すことになった。
僕「…ハルちゃん大丈夫かな。」
僕は手当てをしたことに少しばかり後悔していた。
自分がやったことが『正解』なのか『不正解』なのかがハッキリしていないせいだろう。
僕は、時計に目をやった。2時5分前を指していた。
僕は気合を入れる為に、両手で軽く頬を叩いた。
僕「よし、行くか。」
そうして、ビルのエントランスに入っていった。
…
ビルに入ると受付があった。
僕は社長とのアポイントメントを取っている旨を伝えると、受付の女性はパソコンに向かって調べ始めた。
受付「確認が取れました。上丸商事の大木様ですね。
2時からとなりますので、奥のエレベーターから5階にお上がりください。
5階にあがりましたら、案内の者がおります。
お手数ですが、こちらのゲストカードを首にお掛けください。」
僕は、ありがとうと言って奥のエレベーターに歩き出した。
歩いていると、僕は何か違和感を感じた。
立ち止まって少し周りを見渡してみた。
僕「ああ。そうか」
僕は納得したようにまた歩き出した。
そうこの会社には通路といる通路に余計なものを一切おいていない。
殺風景ではあるが壁は色鮮やかで、絵画なども飾られていたので圧迫感はなく、意外にも心地がいいものだと感じた。
また地面にはエントランスから受付、トイレなど各場所までしっかり点字ブロックが施され、完全なバリアフリーであった。
僕は、心の中ですごい思いやりが行き届いているなと思い。
外観だけで判断した自分を反省した。
僕は、エレベーターに乗り、5階のボタンを押した。
…
五階につくとすぐ目の前に案内の者と思われる女性社員が立っていた。
女性社員「本日はわざわざお越しくださいましてありがとうございます。
社長は、こちらにおりますのでどうぞ。」
そう言って女性社員は歩きだした。
僕は、軽くお辞儀をして後に着いていった。
五階のフロアにはそれほど人数はいなかったが活気づいているというか慌しい様子だった。
僕「皆さんお忙しそうですね。世界的発明の影響ですか?すごいですね。」
女性社員「い、いえ。普段はこんな感じではないのですが今日はちょっとありましてね。」
女性社員は何か気まずそうに答えた。
僕もその返答に空気を読み、それ以上突っ込んだ話をしなかった。
女性社員が一度立ち止まって、僕の方を向いた。
女性社員「あの、大木様。誠に申しづらいことなのですが、
実はそのゴタゴタのせいで社長のご機嫌があまり思わしくありません。ご無礼があるかもしれませんが、何とぞお許しください。」
僕はあっけにとられた。
ただえさえ、気難しいと聞いている社長がさらに機嫌が悪いときた。
僕はつい額を右手で覆った。
僕(まいったなあ。もう交渉の余地もない状況じゃないか。)
…
女性社員「こちらです。」
女性社員は扉をノックした。
奥から男性の声が聞こえた。
男性「誰だねこんな時に。」
女性社員「面会予定の上丸商事の大木様がいらっしゃいました。」
男性「…そんな時間か、しょうがない入りたまえ」
女性社員「はい」
女性社員は扉を開け、僕に入るように促した。
その目は既に僕に詫びているような感じがした。
僕はこの時、正直帰りたい気持ちになったのは言うまでもないだろう。




