[特別な場所]
[特別な場所]
高台にある小さな公園。
ここはビル街とは違いさわやかな風が通り抜けていく。
風が通り抜けて行く方向をみると、町並みが一望できることを知った。
とても綺麗だった。
決して自然豊かとは言えない眺めではあるけど、都会ならではの美しい風景だった。
その景色に見とれていると後ろから春風ハルが話しかけてきた。
春風ハル「大木さん。風が気持ちいいですね。私には見えないですけど、景色もいいでしょう?」
僕「はい。」
春風ハル「さっきお店でお話しとこと覚えていますか。」
僕「はい。」
春風ハル「ここは私が唯一一人になれるところです。マスターと洋子さんも重い都会の空気がイヤになった時にくるそうです。」
僕「そうですか。確かにここだけ都会からかけ離れている感じがしますね。」
春風ハル「無理言ってすいませんでした。」
僕「いや、いいよ。毎日、空気の詰まったところにいるから、こういった特別な自分の場所があるなんて、なんかうらやましいよ。」
…
少しの間。僕と春風ハルは、話さず、心地よい風に吹かれていた。
春風ハル「大木さん、今日はいい天気ですよね。」
春風ハルは、顔を上げ手を伸ばした。
僕「うん。いい天気だよ。雲ひとつない。快晴だ。」
春風ハル
「私は、一度でもいい。空が見たい。太陽のまぶしさを感じたい。
ここから見える景色を知りたい。自分の街をみたい。
いつもお世話になっているマスターと洋子さんをみたい。
おいしそうな食べ物をみたい。
やさしい大木さんを見たい。
自分の顔が知りたい。
お母さん死ぬ前に一目見たかったな。
お父さんは、声だけで十分。
(少し微笑んで言った)
大木さん。目が見えない私ってどう思います。」
春風ハルは、自分の思いを一気にぶつけてみた。
自分が嫌われることを覚悟した。
僕は、真剣な春風ハルの顔つきに自分の思いを話した。
僕「ハルちゃん。僕は目の見えない君の気持ちをすべて知ることはできない。
僕は確かに、この綺麗な空や景色が見える。
君が言った、マスターや洋子さんも見える。
見たくもない自分の顔もね。
(苦笑しながら言った。)
ただね、ハルちゃん目が見えると言うことは、当たり前だけど見たくないもの見えてしまう。
人が争うところ。人によって汚された景色。
知りたくもない情報も目を通して入ってくる。
人の顔色を伺っての生活。
それは本当に心身ともにストレスになる。
僕のこともその一つだと思う。
ハルちゃんは僕のことを想像しているかわからない
たぶん美化しているんじゃないかな。
でも、実際の僕をみると、とてもがっかりすると思うよ。」
春風ハルは、そう言っている僕に言葉を遮って言った。
春風ハル「私は、がっかりしません。
大木さんは大木さんです。
目が見えないとしても見えたとしても私今日と同じ行動をしたと思います。
ただ、私は今自分が生きている世界を知りたいです。」
春風ハルは、強く芯の通った口調で言った。
…
僕は、その言葉に心打たれた。
僕は、この子にこの世界を見せてあげたい。
それが、今まで暗闇の世界に生きてきた一人の女性にとって
正しいことなのか間違っていることなのか、僕はわからない。
僕は、この子ならこの真実の世界に耐えられる、いや耐えてほしいと思った。
僕は、自分の両手を見ながら意を決した。




