[事件]
[事件]
彼女が見つめる中、ぐぅっと半分くらいまで飲み込んだ。
「!?」
「これは!」
僕はすぐに彼女の方を見た。
彼女は悪い笑みを浮かべていた。
僕は彼女に問いただした。
「前田君!これはホットウーロン茶ではないよね?」
「はい。ホットウーロンハイです。」
彼女は悪気もなく微笑みながら言った。
するとその話を聞いていた先輩の女性社員がやってきて
何も言わず前田雫の頬を叩いた。
パアーーーン!
ガシャーーン!
会場は一気に静まり返った。
前田雫の頬は赤く染まり呆然と先輩社員を見つめ
辺りにはビールジョッキが割れた破片が散乱していた。
「あなたいい加減にしなさい。」
「やっていいことと悪いことくらいわからないの。」
「あなた!大木主任の事情は知っているはずよね?」
「あなたがやっていることは大木主任の生死にも関わるかもしれないのよ。」
彼女はまくし立てる様に前田雫に言い放った。
前田雫は、彼女に注がれる冷たい視線と先輩社員からの叱責で
自分のした事の重大さに気づき、一気に顔が青ざめていった。
そんな彼女をよそに先輩社員は、こちらに視線を向け
「大木主任大丈夫ですか?一度トイレに行かれますか?」
他の社員も一気に集まって来ては、心配の声を掛けてくれた。
当の僕は、今日は体調がいいせいなのか、
はたまた好意を寄せてくれる女性との会話でアドレナリンが出ているせいなのか
急激な体調の変化はないようだ。
ちょっと頭がふんわりしているがこれはアルコールのせいだろう。
一人一人声を掛けてくれた会社のみんなにとりあえず今は体調の変化はないことと
心配を掛けて申し訳ないとお詫びをした。
そういったやり取りの中、前田雫に目がいった。
彼女は、同期からいびられ、先輩・上司からも注意を受け、
目に涙を浮かべ体を小さくして謝り続けている。
僕は、そんな彼女がかわいそうになり回りのみんなに言った。
「前田君はもう十分に反省しているみたいだからそんなに責めないでやってくれ」
「お酒を飲みすぎて、注文を間違えたかもしれないし、確認しなかった僕も悪い」
「そもそも僕の特異体質が原因でこうなってしまったのだから、彼女を許してやってほしい」
「課長。この件は、責任を問わないでもらえませんか?」
心配して近くにいてくれている課長だけでなく皆に聞こえるように言った。
課長は、僕の目を見て察したようにコクリと頷いた。
その様子を見て、自体は収集したように感じたみんなはその場から離れていき
元の和やかな空気を取り戻した。
課長と前田雫を叱った女性社員は、何か体調に変化があるようならすぐに伝えるようにと
念を押してその場から去っていった。