[祝賀会]
[祝賀会]
和やかなムードの中飲み会は進んでいく中
僕もホットウーロン茶を片手に少しずつではあるが食べ物をつまんで楽しんでいた。
今日は、いつもより体の調子がいいな。
食べる事が苦にならないし、なによりおいしく感じる。
部下と世間話をしていると可愛らしい女性が話しかけてきた。
「大木主任。飲んでますかぁ?」
彼女は酔っているらしく、顔が少し赤く、少し呂律が回っていない。
「うん。おいしく頂いているよ。ホットウーロン茶を」
と僕は別にいやな感じではなかったので、笑ってそう応えた。
「主任!もうあんまりないじゃないですか!ホットウーロン茶が!」
さらに彼女が突っ込んでくる。
「そうだね!じゃあもう一杯格別なホットウーロン茶を入れてもらえないかい」
そう答えると彼女は敬礼の格好をし「ラジャー!」と言い
微笑みながら飲み物を取りに行った。
部下の一人が
「主任!彼女主任に惚れてますよ。間違いないです。」
と言い切り、さらに
「主任!彼女の気持ちに応えてやってくださいよ!」
なんて煽りも入れてくる始末である。
彼女の名前は「前田雫」、22歳で今年入社したばかりで、
今回が初めての祝賀会ということで少しばかり羽目を外してしまっているのだろう。
僕は彼女の指導役として半年ほど一緒に仕事をしている。
そんな彼女がホットウーロン茶を片手に少し千鳥足で戻ってきた。
「主任!私が丹精こめて作ったホットウーロン茶です。心して飲んでください。」
少し生意気な言い方でグイと胸に押し付けるように渡してきた。
そのちょっと睨んだ顔が可愛らしく、恥ずかしくなってすぐに目線をそらしてしまった。
「前田君が作ったわけじゃないだろうに」
苦笑しながら僕は言った。
「主任!私が入れたんです。男を魅せてグイっていってください」
「それとも私が手本を見せましょうか?」
近くに置いてあったビールジョッキを飲もうとしたので、僕は慌てて
「前田君!駄目だよ一気飲みは。危ないよ。」
と嗜めた。
「じゃあ!主任が!」
まあ、こっちはウーロン茶だし、普段真面目に頑張っているから
少しだけ付き合ってあげるか。
そう僕は思い
「前田君!これは熱くて一気はできないから飲めるところまでだよ?」
そう言うと彼女の顔はぱああと明るくなり、うれしそうに頷いた。
普段の僕なら絶対にしないであろう
胃に腸に負担を掛けてしまう飲み方をすることになった。