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手当て “GOD HAND~奇跡の力~”  作者: さじかげん
19/72

[両親]

[両親]


看護師に案内されICU前の待合椅子にたけし君と座っていた。

ようやく落ち着いた時間を得ることができた。


もう時刻は、午後3時を指していた。

近くの自動販売機で飲み物を購入し、たけし君と談笑していた。

ちさとちゃんの容態は詳しくはわからないが、一宮仁が大丈夫と言うなら大丈夫だろう。

なにより、たけし君に笑顔が戻ってよかったと感じていた。


少しの間だが、自分の力について忘れることができた。


遠くから足音と話し声が聞こえてきた。

その音は徐々に大きくなってきた。どうやらこちらに近づいて来ているようだ。


その姿が目に捉えることができた。

わかるのは大人が4人、男二人と女性一人、そして看護師の女性一人のようだ。


隣に座っていたたけし君が立ち上がり、駆け寄って行った。


「おかあさん、おとうさん!」


たけし君とちさとちゃんの両親のようだ。

両親とも30代で、僕同じくらいの年だろう。


女性一人と男性一人がたけし君に同時に近づいて来た。


父「たけし」

母「たけし、ちさとは無事なの」


母親はたけし君を抱きしめながら聞いた。

父親は額に汗を流し、母親は涙を流し、二人とも動揺を隠せない様子だった。


父親は少し強い口調でたけし君に言った。

「あれほど、勝手に動き回るなと言っただろう!」

「ちさとに何かあったら…」

そこで言葉を濁した。

子どもに言うべき言葉ではないと察したのか、後の言葉を口の奥に飲み込んでいた。


たけし君は身体を縮めた。

「おとうさん、おかあさん!ごめんなさい」


少し無言の間があった。


案内をしていた看護師が口を開いた。

「ちさとちゃんの処置が終わり次第、医師からの説明がありますので

こちらで少しお待ちください。」


看護師は、頭を下げてその場を後にした。


看護師の後ろにいた一人の男が、椅子の前で立っていた僕に気づき

たけし君の両親に声を掛けた。


「お客様、あちらにおられる方が、今回事故を見掛け、ちさとちゃんの救護からたけし君の面倒みて今の今まで付き添ってくれていた大木強志さんです。」


そう言って僕を紹介してくれたのが、あのデパートで救護の指揮をとってくれた店員の男性であった。


僕は、軽く両親と店員に頭を下げた。


両親と店員も軽く頭をさげて、こちらの椅子まで近づいてきた。


父親が先に口を開いた。

「この度は、ちさとを救護していただき、たけしの付き添いまでしていただきまして

本当にありがとうございました。」

父親は、深々と頭を下げた。

母親も、涙ながらもありがとうございましたと頭を下げた。


「いえ、僕はたいしたことはしていません。そちらにおられる店員の方の迅速な指示とその場に居合わせた医者、そしてその場に居合せ協力してくれた皆さんのお陰です。」

「それより、ちさとちゃんの容態が回復することを信じています。」


父親は無言で頷き、母親はまた泣き崩れてしまった。


男性店員は、僕に小さな声言った。

「ちさとちゃんの容態は、救急車から連絡があり、ご両親にも伝えてあります。」


店員は、そのことを告げると

「私は、これで失礼します。ちさとちゃんが元気になり、またご家族でお買い物が楽しめることを祈って降ります。」


深々と礼をして男性店員は去っていった。


その後、僕にも迷惑がかかるからとご両親が帰るようにうながされた。

僕は、医者に待つように言われたことを両親に伝え、一緒に待たせてもらうことにした。


その間、僕は幾分落ち着きを取り戻してきたご両親に事故のいきさつを話した。

両親は、ただじっと僕の話に耳を傾けていた。


話が終わると、僕は少し離れた場所で待つことにした。


両親の元で待っていたたけし君が僕のところにやってきた。


「たけし君、両親の側で待ってなくていいの。」

「うん、おとうさん、おかあさん何もしゃべらないし、あっちで待っていてもいいよって、いっていたから…」

僕はたけし君と横に並んで座った。


少しの間何も話さなかった。

そして、たけし君がボソッと呟いた。


「ぼくのせいなのかな…」


消え入りそうな声で言った。

僕は、少し考えてたけし君に言った。


「誰のせいでもないよ…悪いことが運悪く重なってしまっただけだよ。」


うそではなかった。

デパートに行かなかったら。

親が目を離さなかったら。

階段が近くになかったら。

違う遊びなら。

じゃんけんで勝てたなら。

階段の下の方だったら。

転び方が違っていたら。

…言えばきりがない。


たけし君は、弱弱しく首を縦に振った。

そして、顔を僕に向けて言った。


「おにいちゃんがちさとを助けてくれた。そうでしょ?」


たけし君は祈るような顔で僕に語りかけた。


僕は、脳裏にあの時のことが浮かんできた。

手から発した陽だまりの光り…僕は両手を見た。


「僕は、ちさとちゃんを助けられたのだろうか…」

誰にでもなく呟いたその言葉は、病院の冷たい空気に消えて言った。


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