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プロローグ

テンポ良く更新していきたいですね(願望)

 

「異世界転生」が流行(はや)っているらしい。


 のっけからゲームの話?


 ――ちがう。


 それじゃあ最近呼んだマンガ?


 ――たしかにマンガでも転生したらスライムになる話や、盾使いの勇者が異世界で成り上がっていく話が流行している……だが、ちがう。


 わかった! 好きなアニメの話だ!


 ――仕事が忙しくてアニメは1クール1本終えればいいところだ。ちなみに今クールは「ガンダム」しか観ていない。


 僕が住んでいるこの世界で、「異世界転生」が大ブームなのだ。

 テレビや新聞が大まじめに異世界から若者が帰ってこない現実を指して、「若者の現実離れ」などと嘆く。


 僕だってはじめ聞いたときは、耳を疑った。

 ついに日本人は暑さでまとめて頭がおかしくなったのか。


 だといいんだが(よくはない)、残念ながらそうではない。


 多くの日本の若者が異世界に転生してしまって戻ってこない――。


 はじめは若者の行方不明者が増えている、という形で報道されていたと思う。

 神妙に報道する各局キャスターの顔をよく覚えている。


 だが、実態はそうではなかった。

 若者たちはある日、異世界に転生する方法に気づき、それを実行していったのだ。


 いまや、この国は生産人口の低下に悩まされている。

 少子化ではなく、まさかの「転生化」にぶち当たるとは誰も予想できなかっただろう。


 なぜそんなことが起きたか?


 きっかけはあるひとつの事件にさかのぼる。

 10年前、ある独りの男――後の人間は彼のことを開拓者(フロンティアマン)という、文法もセンスもやや心持たない呼び名を付けた――が、大きな注目を浴びた。


 公共放送が大晦日に放送する赤白とんちき歌合戦(俗称)のステージに、突如、男は出現した。

 どこから出てきてたのかも、現れたのかもわからない。


 文字通り、出現したのだ。


 ステージは当然、大騒ぎ。

 テレビはお決まりの「しばらくお待ちください」を流したし、会場は蜂の巣をつついたような騒ぎだったらしい――残念ながら、ぼくは大晦日の夜も大絶賛労働デスマーチだったため、『その瞬間』は観ていない。

 あとで動画投稿サイトで雨後の竹の子のように投稿されては消える動画で後追いしただけだ。


 翌日のニュースで乱入男は警察に取り押さえられて、現行犯逮捕されたらしい。

 しかし、男は取り調べのさなか、珍奇な証言をはじめた。


 ――俺は別の世界にいて、気づいたらステージに立っていたのだ。


 当然、警察は男の証言を錯乱状態の妄言として取り合わなかった――だが、国民というかインターネット民たちはそうではなかった。


 動画を見ると、たしかに男は突如、どこからともなく出現したように見える。

 隠れるような場所も、ステージの底から現れた様子もない。

 当時のスタッフたちも、演出では絶対にない、と口をそろえて証言した。


 ならば、どうやって?


 文字どおり、()()()()()()()()現れたのだ。


 もしかして男は、ほんとうに別世界の人間で、なんらかの力でこの世界に召喚されたのではないか?


 ほとんどの大人はまともに取り合わなかった。けれど、ネットでよく見る陰謀論として片付けてしまうには、あまりにインパクトの大きい事件だった。


 そして、人びとの記憶から事件が忘れられようとしていた、次の年の大晦日――。


 またもや、事件は起きた。


 いいや、召還が起きた。


 昨年の録画映像を見るかのように、()()()()()()()時間、()()()()()()()アーティストの出番、()()()()()()()曲、()()()()()()()状況で独りの人間が出現した。


 一瞬、みんなこう思った。

 もしかして、昨年の男がまたおなじ犯行を――?


 だが、視聴者はまもなく気づいた。

 ちがう。()()男は()()男と別人だ。


 現場はまたもや大騒ぎ。しかし、今度は誰も彼のことを取り押さえようとはしなかった。


 気づいたのだ。

 あの男が真実を語っていたことに――。


 そして、時間は戻って現在――。


 僕も若者のひとりとして、異世界に転生することを決めた。

 否、こういったほうがわかりやすいな。


 ――トラックに飛び込むことにした。

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