そのに
お母さんとお父さんの計らいでゲームボーイで遊べるようになったから30分やってる。最初は30分って時間を気にも留めなかったけれど、やってみると案外早く終わるものだ。
―ピピピピピピピピピピピピ―
「はい、和くん30分たったよ。ゲームおしまい」
「お母さんちょっとまってあと少し・・・」
「タイマーなったでしょー。電源切ってー」
ほら今もそこで和希がお母さんに訴えてるけど意味なし。無慈悲に30分を告げるタイマー様がなってしまえばそこで終了なのだ。
鳴らないフリして続けようと思ったって、タイマーの音って結構響くからすぐばれるし。
「和希、セーブ見つけられた?」
「ううん、あか姉ちゃんは見つけた?」
「見つけたら教えてるよ・・・」
二人してため息をはいてテーブルに突っ伏す。お母さんはそんな私達を見てるだけで特別にーなんて言葉は絶対かけてこない。
お姉ちゃんが本体と共に手にしたソフト、セーブが見つからないのだ。
セーブポイントを見つけられてないのかそもそもセーブ機能が存在しないのか。わからずに30分遊んで終わる。
そう、セーブがあるんだかないんだかわからないままここ毎日ずっと同じ所をやってる。
「あか姉ちゃん、あのゲームってさ?何したらクリアなの」
「私に聞かないでお姉ちゃんに聞いて。お姉ちゃんのだしさ」
「箱どっかやったから説明書ないんだって」
「さすがお姉ちゃん、やることが違いますわー」
説明書がないならセーブわからないじゃんかー!とちゃぶ台返しをしたいところだけどこれはちゃぶ台じゃないしむしろ重いから脳内でひっくり返しとく。
きっとあのゲームをクリアすることはないだろうな・・・うん。
「おっ?和希に朱音じゃん。二人してうなだれてどうしたの?」
「どこぞのお姉ちゃんがソフトの説明書をなくしたからゲームが進まないってうなだれてるの」
部屋からルンタルンタ降りてきたお姉ちゃんが見事に爆弾を落としやがりました。今まさに貴方のお話をしていたんですよ。
冷蔵庫から麦茶を出しながらお姉ちゃんはあっははーごめんごめんとか言って反省の色がない。
「でもさ?お姉さまのお陰であんた達ゲーム出来てるんだから感謝しなさーい?」
「そのおねーさまが説明書をなくさなければもうちょっと上手に進められたと思いマース」
「あか姉ちゃんの言う通りだよ。ゆい姉ちゃん説明書どこやったのー」
「うーん、どーっかいっちゃったんだよねー。多分探せばあるよ」
探せばある・・・あの部屋を探せと。お世辞にも綺麗とはいえないとっちらかった部屋のどこを探せというんじゃー!!私の部屋もとっちらかってるけど。
「時間短いよー、すぐ終わる」
「和希、諦めろ。我が家にゲームがある事がもう奇跡なんだから」
「そうよ、時間決めなきゃあんた達三人際限なくやるから時間決めたのよ」
しれっとお母さんの一言が突き刺さる。うん、確実に30分がなかったらずーっとやってるわ。
「あんた達もうゲームやったんだし外で遊んできたら?」
「あ、お姉ちゃんもやったんだ?じゃあバトミントンやろ?」
「僕もやるー、ゆい姉ちゃんもやるよね」
「やるやるー。和希はゲームボーイ片付けといてよね」
決まれば早い。家の前は大道路から一歩入ったところだから車通りが殆どなくて遊ぶにはうってつけ。
和希はゲームを片付けに部屋に走ってくのを見届けて私とお姉ちゃんは競争しつつ玄関に向かう。
案外ゲームなくてもやっていけるのかもしれない。