そのなな
結婚後久しぶりに帰宅したある日、リビングでお母さんから鍵を渡された。
「それ、表玄関の鍵だから。で、今までの鍵頂戴」
「どうせ裏口しか使わないのにー。ちょっと待って、キーホルダーが大量に・・・ウヌ・・・グ」
「あんた大量につけてるわねー・・・邪魔じゃないの?」
そこそこ大量につけてあるキーホルダーを指摘されるけど、それ所じゃない。これが基礎になってるから外すにはこっちの金具を外して後は・・・。
「全部携帯につけてた奴だからね。どうせ榎本家に来た時も使わないしいっかーって増やした」
「そう言う事ね、それにしてもうまいことつけたわねー。あ、どうもどうもこれで朱音ちゃんの回収です」
結婚して独立したのであまり帰らなくなったし家に行ってもお母さんか誰かが開けてくれるから必要性ががくっとさがったのだ。でも、一応ずっと持ってるのは過去におかあさんがおばあちゃんの家の鍵を持っていたのを見たからだろう。
回収と言われなかったのも大きいかもしれないが・・・。
「また何で表玄関にしたの?裏の鍵替えたなら裏のくれたほうが楽なんだけど・・・」
「今お父さんとお母さん以外表にしてるのよ。裏玄関鍵うまく掛からなくなっててね」
防犯のためにもねーと零すおかあさんの言葉に脳内を探れば確かに裏口の鍵が閉めにくかった事実と、それに合わせて金具で止めるようになってたのを思い出す。
「あー、それでか。確かに危ないもんね」
「そういうこと」
会話を続けながら新しい鍵にキーホルダーを付けていく。つけるだけなら早いんだよなー。
自室に戻ろうとしたらお母さんがはっ!とかわざとらしく、でもいつもよのうにいいながら戻ってきた。
「そう!一番大切な事言い忘れてた!」
「え、なに?」
「真ん中の鍵穴に鍵かけちゃ駄目だからね?」
「なんで、そこが一番大切じゃん!」
「実は、お父さんがこないだ滑りが悪いからって油を吹きかけてたら垂れて鍵穴についちゃったの」
その言葉に浮かぶお父さんが唸った後に喜々として油を吹きかける姿。そして鍵穴に油が付いたときの反応・・・。
「鍵いれると、もれなく油まみれになるから注意してねっ」
「はーい」
笑顔でかつ、楽しそうに言うお母さんはきっとうっかり忘れて鍵いれたんだろうなー・・・。そんでもって忘れたこと棚にあげてお父さんに文句言ってうまいこと丸め込まれたんだろう。
そして恐らく私か他の誰かが第二の被害者になればいいとか思ってるんだろ。
誰が忘れるもんか!私は左右の鍵しかしめないからな!
これにて榎本家の玄関事情は終了です。
次の章からは別のお話にシフトしますが、その際に年齢も幼くなります。ご了承ください。
こんな形でだらだら日常に起きた事をひたすら綴っていこうと思います。
ココまで読んでいただき大変ありがとう御座います。次章も出来上がりましたらお楽しみください