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榎本朱音の赤裸々な日常  作者:
榎本家の玄関事情
5/10

そのご

小学生から無事中学生になったのは嬉しいなーとか思ったけど、受験もなかったしうちの地区は1小1中だから面子なぁんも変わらなくってつまらん。他の学区はいくつかの小学校が分散して中学校に行くから他の人と仲良くなったりとかあるらしいけどそんなものは無かった!

転校生がいたけど仲良くなってないし変わりないんだよな。完全に小学校の延長って感じ。

何か運動部の人は上下関係とか靴がどうたらとかあるみたいだけど私関係ないしー。家も変わりないしなぁ。

言うなれば鞄が重い!本当重い!これにつきる。置き勉は禁止されてるし・・・早く帰って鞄置きたい。


「何でそんな日に限って鍵掛かってるの?!」


思わず叫んだ。えっちらおっちらさ、坂上ってえんやこらって帰ってきたのに・・・今日六時間授業だったから何時もより重いし体育で疲れてるのにぃ。

叫んでも開かないもんは開かないし表玄関レッツチャレンジ・・・第3の玄関チェック・・・開かぬ。


「・・・登るか、塀」


裏玄関に戻って鞄を隠す。中学校の制服、ジャンスカで裾も長いけど動けないわけじゃない。まぁどうせ下に体操着着てるから脱いでもいいけど外でとか変質者になる・・・

自転車置き場に行ってなるべく制服を汚さないように、かつ迅速におばあちゃんの部屋にある窓を確認するも見事撃沈。


「どーすっかぁな。今日は防御が高いなぁ」


土埃を払いながら裏玄関に戻るべくとぼとぼ歩くしかない。その時私の目に入った一つの窓。


「・・・ベランダ・・・か」


ベランダに上がれば窓がある。ちょっとばっかし行くのに難易度が上がるけど問題ない。塀に上がるのをlv1とするならベランダに上がるのはlv5位、問題ない。いける!

スカートの裾とか色々注意しながらまずは塀の一番上まで登る。ここからベランダの床に移って柵を乗り越えればミッションクリア!

そこが少し難関だ。柵は重量を耐えるような構造してないから体重をあまりかけられないのでうまいこと足をかけて自力でよじ登るしかないな。


「ちょっと待て・・・私。考えるのだ」


塀の上にぼっ立ちしたまま呟く。目の前はベランダの床が見えるけどベランダは二階にあるわけだ。


「お母さんが鍵を閉め忘れて外出なんてありえない・・・おばあちゃんが二階の戸締りを見に来る事もありえない・・・」


肩を落として大きくため息をはいて飛び降りた。靴がローファーで傷むとか気にしない。むしろそんな事考えてたら塀をよじ登る事自体しないし。

暫く鞄の中身を思い返す。で、鞄をもう少し分かりにくくするべく奥に隠すと踵を返した。


「しゃーない、お母さんに借り行くか・・・」


お母さんが働いてるのは最寄り駅近くにある本屋さんで働いてるから行けば鍵なんて借りれるのだ。ただ、行くのが面倒だから悪あがきをしてただけでもう何度も借りに行ってる。兄弟そろって全員






本屋は本当歩いて10分程の所にある。迷い無くレジ付近まで行って購入客が途切れるのを待って声をかける。


「すみません、榎本裕子えのものゆうこは今居ますでしょうか?娘の榎本朱音と申します」

「あら、榎本さんの娘さん?こんにちは、榎本さんならあっちの奥にいるわよ」


笑顔で対応してくれたお姉さまにお辞儀をして言われた奥に向かう。そうすればパソコンをいじって仕事をしている姿が見えた。もちろんここで走ったりなんてしない。ここは一応職場なのだ、子供らの態度一つでお母さんの評価が下がる。


「お母さん、鍵忘れた。貸してー」

「朱音、おばあちゃん居なかったの?あ、この子がうちの二番」

「こんにちは、二番の朱音です」


外面を投げ捨てて普通に話しかけると他の従業員さんも居て紹介されるので笑顔でお辞儀する。二番とは第二子の意味だ。安直すぎる。むしろ子供を番号呼びとは?と思ったけど今更だ。

やることがひと段落したところでお母さんは鍵を取りに席を外す。


「榎本さんに本当似てるねー。よく言われるでしょー」

「自分ではよくわかりませんがお姉ちゃんとは似てるって言われます」


ここで発揮するのはご近所のおばちゃん達との間で培った世間話スキル。笑顔を忘れずに会話をしてればお母さんが戻ってきた。


「朱音、あんた自分の鍵はどうしたのよ」

「うーん、多分部屋にあると思うから帰ったら探してみるー。じゃあ借りてくね」

「気をつけて帰りなさいよ」

「はーい、じゃあ失礼します」


お辞儀を忘れずそこを去る。ちゃんとレジに寄ってさっきの人にお礼を言うのも忘れない。

意識してやってるわけじゃなくて近所のおばちゃん達が当たり前のようにしてくるのが染み付いてるんだろうなーと思う。

とりあえずこれで無事家に入れる。後はちゃんと自分の鍵を探して、手渡しでお母さんに返すだけっと。

テーブルに置いておくだけだと返したことにならないのがちょっと面倒。


後日談

「お姉ちゃん、こないださ鍵無くてベランダ登ろうとして絶対鍵掛かってると思って辞めたよ私」

「朱音すごいね!お姉ちゃんベランダ登って窓閉まってるの確認して絶望したよ」


やることは兄弟一緒だった・・・。

ベランダによじ登るなんて 絶 対 に やめましょう。落ちたら怪我間違いなしに加えて110番されます。

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