そのいち
「げ、開いてない」
学校から帰宅して扉を引くけどびくともして下さらない。我が家は横に引く形だから力いっぱい入れた指先がちと痛い。
私は榎本朱音、榎本家3人兄弟の真ん中で両親とおばあちゃんの6人暮らし。
でも常に鍵が必要なわけじゃなくて普段はおばあちゃんが居るはず何だけどこうやって時折いないので鍵を持ち歩かないと締め出しを食らうのだ。
面倒だと思いつつもランドセルを下ろして鍵を出すしかないかと諦める。鍵がしまってたら力を入れたってどうせ開かないんだ。
「あら朱音ちゃんお帰り。ちょっとおばあちゃんおつかい行ってたのよ」
「おばあちゃんいい所に!おかえりー、鍵あけてー」
ランドセル下ろして出すよりおばあちゃんにお願いするほうが断然早いしドアを前を譲れば鍵を開けてくれる。これで家に入れる!
中に入れば予想通りおつかいに行っていますと書いた置手紙があった。律儀に出発時間まで入れるのがおばあちゃん流。
帰ってきたおばあちゃんが捨てればいいのにメモはスルーされる。あ、私が捨てなきゃ駄目なんかと理解してくしゃくしゃっと丸めて握りつぶす。別に恨みはない。
「そうそう、羊羹買ってきたんだけど食べる?」
「食べる!今すぐ手を洗ってくるからまってて!」
思わぬあまぁい誘惑に階段を猛ダッシュで駆け上がる。おかあさんは和菓子嫌いだから買ってきてくれないんだよね。貴重な羊羹逃してなるものか!
今食べなかったら絶対ご近所のおばちゃん達と食べて無くなるもん。私は羊羹が食べたい!
部屋にポーイとランドセルを投げ捨てて手を洗う私は根っからのおばあちゃん子。
初投稿作品となります。
時間をみつけてこそそっと更新していけばと思います。ここまでお読み頂きありがとう御座いました。