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もしも、完璧世間知らず娘が現世に召喚されたら  作者: 神田優輝
学園編・続 ~新たな物語の幕開けになった件~
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第22話 転入生再び!? ~謎に包まれし行動~

   38


 身体能力試験以来、仁達のグループにニーナ=オールブライトがちょくちょく顔を出す事が多くなった。

 アティラに勝てた喜びとは裏腹に何の悔しさを見せないアティラにムカついて何気に突っ掛かる。

 結局の所、何も変わっていないような気がするではないか。


「あら、皆さんここにいらしてたんですね……」


 ちょろちょろと周りを確認しながら近づく。


「何か用か、ニーナさん。アティラさんならここにはいませんよ」


 呆れ顔で仁がまだ用件もわからないニーナに即答。


「別に、アティラに用事何て……別件よ、別件」


 アティラがいないとわかった瞬間、ニーナの口調が少しばかり軽くなったのは、果たして気のせいだろうか?



 目の前に立っているぐるぐる金髪は、米国から来た貴族のご令嬢である。

 目立つのがモットーみたいな人で、入学当初から常に上位の成績を収めていたとてつもない才女である。

 しかし、そんな彼女にライバル的存在が現れ、(ことごと)く1位の座を取られてきたアティラに何回も何回もテストで勝負を挑んだ。

 だが、それでも負け続けたニーナは、とうとうアティラにこの前のテストで勝てた。



「で、その別件とは何?」

「今思った事なんだけど、熊野君ってアティラさんと違って私の扱い酷いよね」


 微妙な表情でぽつりと自分の意見を言うニーナに仁の隣にいた望が付け加えて言う。


「いや、こいつは、アティラ以外こんな感じだよ……それで、ニーナちゃん別件とは」

「ニーナ、ちゃん?!」


 今までそのような呼び方された覚えがない彼女は、何故か望に言われた事が不快に感じたのか、汚らわしい眼に見え鳥肌が立つような勢い。

 軽蔑一直線の眼差しを望に向ける。


「はぁ~、そ、そんな眼で見られたら……」


 囁く程度で自分の本性を曝け出しながら縮こまる。


「それで、別件てには?」


 二人の茶番に呆れた仁は、ニーナのいう別件について急かす。


「あ、そうだったね。聞きました……この学園にまた転入生が来るって」


 唐突語る転入生の話。

 最近の流行なのかすら疑わしい『転入生』という単語。


(本当に多いな転入生)


 このような思考を巡らしても不思議ではない。



 その正体はまだ謎に包まれているが、確信を持って言える事は一つだけある。


【只者ではない!!】


 時期外れの転入生、これはアティラと全く同じ状況である。

 唯一違うのは、仁の母みたいなコネがあるのかどうか……

 もしも、彼自身が望んで転入したとしたら、転入試験を行わなければならない。

 その難易度といえば、口にするのも恐ろしいものだそうだ。

 その証拠に目の前に立っている金髪のお嬢様がその例だ。

 彼女もまた柔悟と同じく入学からの転入だそうだ。

 柔悟の場合は特殊試験に柔道の試合を行い、三試合全てを勝たなければならない。

 しかも、その三試合の中には三年生もいたそうだが、割りと呆気なく勝ってしまった。

 だが、執筆系の試験を選らんだニーナも難問な問題ばかりの試験を受け、それを見事までに合格点を遥かに凌ぐ点数を獲得。

 以来、一度たりとも転入する生徒が合格する事はなかった。

 だが、今年のラストスパートに転入して来た新しい生徒は、その試験も見事に合格、明日から学校へ来るという噂が今の話題になっている。



「勿論、知っているけど、別に関係ないんじゃねぇの?」


 転入生、確かにレアな感じがしない訳ではないが、それがどうしたって話になる。

 見ず知らずの赤の他人、それに興味を持つ理由などありはしない訳で、そもそもそんな話に乗る必要性すらない。

 この学園に生徒一人増えた、ただそれだけの話。


「だけど……」


 塞ぎ込むように身を引くニーナ。

 もう一押し何かを言いたげそうになるが――


「まあまあ、仁もニーナちゃんもそこら辺にしておいてよ。その転入生は明日来るんだろ?なら明日会いに行けば良いじゃん!」


 無鉄砲な発言をする望。

 だが、そのお陰で話の矛先を変える事ができた。



《翌日》


 昼休み。

 皆勢揃いで1年5組の扉の前で立っていた。


「それで、どいつなんだ、例の転入生ってのは」

「ん~ん、ニーナちゃんから聞いた話だと……おっ!あいつなんじゃない」


 覗き見るようなたどたどしい感じで一同は、くるりと見回す。

 そして、望がニーナから得た情報で転入生の特徴を捉える。



 名は、レオン。

 アティラと同じで名字がない。

 出身地も海外と言うばかりで他には何も言わないらしい。

 髪は、赤毛のパーマ、身長は小柄な150cm。

 第一印象には、物静かで誰も寄せ付けない雰囲気を醸し出している。



 実際に目の前で見るとかなりヤンキーな眼差しと周囲を警戒しているようにも見えてとても近づきたいような気分にはなれない。

 だが――


「レオン君だよね」


(アティラさーーん!!)


 そんな雰囲気を出しても気にせず突っ走る人がいる事をすかっりと忘れていた。

 気軽に挨拶をしてアティラは、相変わらずの笑顔を見せながら真っ直ぐにレオンなる得体の知れない男子生徒の両目を見る。


「あ、あ……あ、あ、あ……」


 口を何回も開閉して、レオンは絶句していた。

 まるで何かに怯えるような眼でアティラを直視する。


 ガッタン!!


 突然、レオンが席から飛び出し、無言のまま教室から逃げ去る。


(何だったんだ今の!?)


 隠し切れない疑問だけが頭の中を巡回する。

 レオンたる人が明らかにアティラを見て逃げて行った。

 初めて会った筈の人に……

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