第11話 ライバルは、上流階級のお嬢様!?
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紅葉が本格的に出始めた頃、アティラは、随分と学園生活に慣れ始めていた。
彼女のずば抜けた知能に感服を覚える。
仕舞いには、たったの二ヶ月での中間試験には一年の中で1位を取るようになっていた。
その功績は、教師全般に知られるようになり、そして彼女を知らぬ生徒もいなくなった。
アティラ専用のファンクラブが結成されたり、秘密裏に防衛隊までもが現れるようになる。
正しく学園のアイドル的存在になりつつあった。
だが、慕われる反面それに抗う者、妬む者も現れ始めていた。
容姿で人気を誇っていた青いロン毛をポニーテイルに収めた艶やかな白い肌で華奢な身体を持った美少女の天月蓮華。
いつも、手下共を連れ歩く、まあ典型的なアイドル系モデルである。
性格からして、仁はあまり興味魅かれる事はないが多くの男性には、彼女を求めるかのように彼女の美 貌の虜になったものも多い。
そこには勿論望が加わっているのだが、彼の場合は可愛い娘でさえあれば何でもいいらしい。
だが今一番問題になっているのは、アティラと同じ留学生のニーナ=オールブライト。
英国から来た上流階級のお嬢様である。
外国ならではの見事な金ピカな金髪をぐるぐる巻きの長髪を靡かせる。
容姿はなかなかの上物だが、やはり彼女の魅力って言えばその知識力と上品な歩き方、彼女の存在自体が誰もが魅了させる。
オールブライトの家柄は、貴族の中でもかなりの地位の持ち主なのだが、三人姉妹の中で次女のニーナは、三人の中で一番のわがまま娘の育った。
彼女に多くの経験をさせるためにこの星ノ宮学園に転入させる事にした。
そして、ニーナはずば抜けた頭脳で小テストを全て満点に近い点数に収め常に1位を保っていたが、アティラが彼女を抜いた事でニーナのプライドが傷つけられ、誰よりもアティラに異常な執着心を芽吹かせる。
だからこうして、毎日、アティラを待ち構えるように一年三組の前で立っている。
「お待ちしておりましたわ、アティラさん。今度の小テストでは必ず貴方よりいい点数取って見返してやりますわ!!」
「あら、ニーナさん、おはようございます――そうですね、今度の小テストでもお互い頑張りましょう!!」
まるで話を聞いていないアティラは、ニーナの両手を握り上下に振る。
どうやらアティラは、自分が勝負を吹っ掛けられているにも気づかずにお互いに励む、ただそれだけの話をしていると思っている。
アティラの反応を見て、悔しそうに頬を膨らませ『もういいですわ』と喚いて帰って行った。
「あら、早速勉学に励むために行ってしまいましたか。私も負けていられませんね」
拳を握り締め、アティラは教室の中へノートを取り出して、今日見る予定の内容を確認する。
まあ、こんな反応を見せるアティラなら、ニーナが不機嫌になるのも無理はない。
仁は、同胞を見る目でニーナが消えた方向を見つめる。
(わかるよ、お前の気持ち)
正直、ニーナと接点がなかった仁は、ニーナに抱いていたイメージは、できるお嬢様ぐらいだった。
それが、今では、同じ苦労を分かち合える仲間になりつつあった。
「いや~、また来てたなニーナちゃん……またアティラ待ちか?」
「ああ、また小テストで勝負だと」
「何か、嬉しいそうだな、お前」
後ろから現れた望は、仁の顔を見て、にやけている事を指摘する。
正直な気持ちは、案外隠しずらいものだ。
(これからも、ニーナさんとは、仲良くできる気がする)
この時、仁は少しの幸せを感じる事ができた。




