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もしも、完璧世間知らず娘が現世に召喚されたら  作者: 神田優輝
学園編 ~新入生が天然美少女だった件~
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第05話 悪名高い熊さんと天才美少女

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 いきなりですが、モテるとは何ですか?

 辞書によれば、人気が多い人、特に異性から好かれると書いている。

 ならモテるの反対は、モテない。

 当たり前すぎて今更何と言われるかもしれない。

 だがよく考えてみよう。

 モテる人は、人が集まり、モテない人は孤独に生きる。

 ならこの状況、どう捉えたらいいのか?

 一見、人が集まりモテる男に見えるでしょう。

 だが、それが間違いだと気づく。

 モテるはあくまで好かれている人。

 なら、人が集まっているのにも関わらず飛び交う言葉は全て罵倒の場合。

 これを言葉で表すならどうでしょう。

 人が集まり、孤独さを感じる。

 人気はないのに、人が集まるこの現象を一つの言葉で言い表せるものはあるのでしょうか?


 ――答えは、YES!!だ。


 ――それは、即ち――嫌われ者だ!!


 何故嫌われ者になったのか?

 それは、たった二日の出来事によって仁の人生をひっくり返した。

 友人ならばれてもそんなに騒がれなかっただろう。

 だが全校生徒となると話は別だ。

 学校では交際が禁止されている訳ではないが、教育の為に厳しい指導をしているシステムでそんな恋愛的感情を育む時間さえ惜しくなる。

 勿論、たまにはカップルも見かけるが、隠れた場所に極稀に見掛ける程度である。

 ひっそりとしかこの学園での恋愛は成立しない。

 なら、それが公になった場合はどうなるのか?

 それが、今の有様である。

 決して、恋愛感情なんて一切ない仁とアティラなのだが、世間の目には、そうは映らない。

 何故ならアティラの転入の放課後、誰かが仁とアティラを尾行し、写真に収め、次の日に登校するれや案の定、この騒動が待ち受けていた。

 どうやら昨日取られた写真を誰かによって学校の掲示板に貼り、そのまま放置した。

 次に一人の生徒がその写真に気づき大声を出す。

 その声に釣られてギャラリーが増えていった。

 波風を立てるとは、よく言ったもんだ。

 噂が一人歩きするともいうように、瞬く間に仁は敵を作ってしまった。


 普通の転入生ならまだ良かった。

 それが男であれば、尚注目されなかっただろう。

 問題は、仁がアティラと一緒にいた事だ。

 容姿端麗のアティラだったからこそこの騒ぎまでに至ったのだが、そこに畳み込むように()()()()の噂が仁に迫る。

 それは、アティラが学園に慣れるまでの世話係として先生に任命された事実。


(もう勘弁してくれ~!!)


 誰にも聞かれない魂の叫びを上げる仁であった。



 登校の度、毎日開ける下駄箱には必ず一通から十通の恨みの(こも)った手紙が備えられていた。

 机に関しては、落書きが殺到。

 言葉では言わんが、いじめの類なのだろう。

 仁自身は、いじめに対し不満に感じた事はなかった。

 どうせ、この行為に飽きる人がでてくるであろうその時まで我慢すればいいだけの話だからだ。

 それよりも、気になるのは、アティラがこれを見て、どう思うのか?

 人自体の考え方に疎い彼女でも、人一倍誰かを思う気持ちは持っている――と思う。

 仁は、アティラに視線を送る。


「熊さん、このテーブルになんて書かれてますか?」


(そうだった、アティラは、まだ漢字を完璧に覚えてなかった!!)


 幸い、この文字の意味を知らず表情もまだ穏やかだ。


「いや、何でもないです。誰かの悪戯ですよ」


 そっか~、と納得するような顔でにこりと微笑む。

 外国からきたという設定でアティラが授業に溶け込むために三週間の有余が与えられた。

 普通に考えれば、たった三週間で慣れる筈もないが、それがこの学園の特徴と言ってもいい。

 この程度の問題をこなせない生徒なんぞこの学園にはいらんと言わんばかりの条件だ。

 だが、驚愕するべきなのはアティラの方だった。

 色々と教えている仁は薄々感づいていた事だが、アティラの物覚えの早さ――それは、天才さえも軽く凌駕できるレベルだ。

 有余の三週間だったが、授業に馴染むのに二週間も掛からなかった。

 知識の吸収力が桁違い。

 まさに知識のスポンジといってもいい。



 この学園のシステムがアティラに取って過酷になると予想していた仁には、まるで夢を見ているかのようだった。

 夏休み明けの学園では、休みに実力が下がっていないかを試すため、週に二回の小テストが行われる。

 それを四週の期間繰り返すのだが、丁度その一週目にアティラが転入してきた。

 最初の週の結果は、最下位だったアティラだが、勿論彼女にとって、この成績が何を表すのか判らず、一から説明しなくてはならない状態だったのだが、彼女の実力は、二週目で発揮された。

 授業に慣れた頃に小テストを行った。

 その結果、全校生徒145人中50位まで伸し上がっていた。

 しかも、一年三組の中では5位に。

 成長速度はマッハに感じた先生は関心する以外できかった。


「すぎじゃない、アティラちゃん。一年で50位って」


 アティラは、何に対して褒められているのか判らず、ただ顔を赤らめるだけだった。


「そんなに褒めなくてもいいですよ、望さん」

「いやいや、本当に凄いんだって!!もっと自信もってもいいぐらいだ!!」


 実際に凄い事だ。

 普通なら50位なんてまだ褒められたものではないが、この学園では普通の常識が通じない。

 エリート校であるこの学園で最下位からの50位は相当な努力でも敵わない。

 それを試みる生徒は、まず努力した時点で心が折れるのが先だ。

 だが、アティラは時間に迫られるプレッシャーも努力した訳でもなく、その圧倒的なまでの成績を成し遂げた。

 ここにいる生徒が十年に一度の天才ならアティラは百年、いや二百年に一度の大天才。

 そんな()がまだ世の中に知られていなかった方がおかしいと思える程に。


(望の奴、アティラさんに名前覚えられやがって、ちくしょー!!)


 隣で会話を聞いていた仁は少し妬いた。



 そして、そんな人の世話係にされた仁の立ち位置はというと――


()っー(じょう)に気まずい)

 ――、だそうだ。


 美人で天才のアティラの傍にいるだけで全校生徒から妬まれ、恨まれの生活。

 そして、自分よりも優れた者の世話係を相手しなくてはならない。

 前からも後ろからもプレッシャーが掛かり、ため息すら出なくなってしまった仁の人生。


(一体、二週間前の俺の人生は何処へいったのやら)


 意気消沈寸前であった。

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