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第2話:始まりの訪問

〜翌日・朝〜

「ふぅ、これでよしっと」

工房の入り口脇に立て看板

『エリフィールウォーター 限定10個 特価 50%OFF!!』

「赤字だね。」

「いいの、捨てるよりましだよ」

「これでお客さんが来てくれればいいけどね。」

「そ、客寄せだよ。そう考えれば悪くないモンね!」

「そううまくいけばいいけど。」

「さ、仕事よ!」


**********************************


かちゃ・・・・

・・・・・・・・・

革のブーツ、革のスパッツ、革のコート、腰にアイテム袋とロングソード。

ブロンドの長髪をのぞけば、いわゆる冒険者スタイル。

身にまとっている物すべてが体になじんでいる。

体裁がそれなりの経験を物語っている。

「どなたかいらっしゃる?」

きりっとした女性の声だ。

「あ、お客だ・・・セフィ、お客さんだよ・・・ねぇ、セフィってば!」

「ふぁ?あん?」

「お・客・さ・ん!」

「あ、あ!はい!いらっしゃいませ!」

あわてて飛び起きて営業スマイル!ふぅ。

わぁ、すごい!女冒険者!

背も高いし、すごくかっこいい・・・

「表にエリフィールウォーター半額ってあったんだけど。」

やったぁ!看板効果絶大だね!

「あ、はい!今セールやってるんです!」

「そう・・・2つほど頂ける?」

「ありがとうございます!」

「それから・・・」

「はい!」

「ここのご主人は?」

あ、やっぱり私の店だと思ってないんだ。私ですって言ったら・・・

「私・・・ですぅ・・けど。」

「そう。」

じゃあいいわ。他を当たるから。って言われそう・・・

「じゃあいいわ。あなたに聞きたいんだけど。」

「すみません、お役に立てなくって」

「あなた、人の話聞いてたの?」

「はい?」

「あなたに聞きたいことがあるの。」

「あ、は、なんでしょ・・・・」

「妖精の卵は作れる?」

妖精の卵かぁ。

妖精の卵って・・・・造ったことはあったよね。

うん、大丈夫!

「え、えぇ、作れます・・・」

「1週間後に受け取れるかしら?」

「はい!」

「じゃぁ、御願い。私はシェリル。シェリル・ガードナー」

「あ、セフィアといいます。」

「よろしく、セフィア。」

「セフィって呼んでください。シェリルさん」

「シェーンでいいわよ。1週間後に取りに来るわ。」

「わかりました。シェーンさん。それじゃ、え〜っと・・・・エリフィールウォーター特価品2個で・・・400Gになります。」

「はい、400Gね。また来るわ。」

「ありがとうございました!」


〜次の日・夕方〜

「ふぅ、エリフィールウォーター、売れ残りは2っつね。」

結構売れちゃった。

半額だもの。当然ね。

「妖精の卵、どうするの?」

「あ、そうね、えーっと・・・どうやって作るんだっけ。」

「うーん・・・覚えてないね」

「そうだね、結構前だもの。作ったのって。」

調べてみないと解らないね。

確か前に作ったときは、ママに教えてもらいながらだったから。

ママからもらった参考書、『秘伝の書』。

おばあちゃんのおばあちゃんのずーっと前から使ってるんだって。

ぼろぼろで所々読めなくなってるんだけどね。

でも、これに載ってるのは基本的なものや、古いものばっかり。

「えーっと・・・・妖精の卵・・・・っと」

「載ってる?」

「ん〜・・・・・あ、あった。これこれ。」

・・・必要な材料は・・・・アリタニーヤ河の石だね。

明日買いに行こう。

・・・はぁ、結構作るのに時間かかりそう。

「今日はもう寝よう。」

「なんだか疲れちゃったね。」

「うん・・・」

あ、そうだ。

「・・・ねぇ、シフォン。」

「なに?」

「明日ちょっと早起きしようかな。」

「いつもゆっくりなのに、どうしたの?」

「ん?ちょっと・・・ね。」

「僕も起きなくっちゃだめ?」

「ううん!寝てていいよ、寝てて。」

「起きちゃダメ、みたいだね」

「そ、そんなことないよ。」

「あ〜、レオンさんに会いに行くんだろ。」

「う゛・・・・」

「明日は朝から雨だからいないよ」

「え゛〜、いじわるぅ。」

「僕は何もしてないよ。」

「ふぅ、そうか、それじゃ明日はゆっくり寝てよっと。」

「どうせ起きれないんだからね。」

「そんな事ありませんよ〜だ。」



〜翌日・バーンタウン大通り〜

「わるいな、セフィ。うちも切らしちまってるんだ。」

「はぁ、そうですかぁ。」

「いやぁ、最近アリターニヤの方に行ってくれる冒険者がいなくってな。」

「そっかぁ、次、いつ頃入ります?」

「さ〜てね。どうだか。明日かもしれねぇが、来週かもしれねぇ。」

「そうですか。ありがとうございました。」

「悪いね。また声かけてくれよな!」

これで4件目、なじみの道具屋は全部当たった。



「何でないんだろ?アリターニヤ河の石なんてどこにもありそうじゃない?」

「アリターニヤ河の石は高級品だからね。それに、最近アリターニヤの方は、モンスターが多いって言う話だよ」

「ふーん・・・」

「ね、『バレスター商会』は?」

「え〜、あそこ、高いんだもの。」

「行って見ようよ。ね。」

「なによ、買い物嫌いなあなたが、ずいぶん乗り気じゃない?」

「あそこならあるかと思ってさ・・・・」

「あ!そっか」

「え、なに?」

「そういえば、あそこにかわいい猫ちゃんいたねぇ。何て言ったっけ?」

「え、あ、うん・・・エリス・・」

「そっか、シフォンはエリスちゃん狙ってるんだ。」

「そ、そんなことないよ!」

「はいはい、解りました。バレスター商会行ってみましょ。」



〜バレスター商会〜

「うわぁ・・・すごい人」

広くて明るい店内。

とても道具屋だなんて思えない。

赤い絨毯にきれいな陳列棚。

でも、お客さんはみんないい格好してる人たちばかり・・・

「・・・お金持ちみたいな人ばっかりだね・・・」

「うん・・・趣味で精錬やってる人たちだからねぇ。」

「金持ちの道楽か・・・。」

皮のアイテム袋ぶら下げて来るところじゃないね。

「いらっしゃいませ。どのようなものをお探しでしょうか。」

初老の店員が話しかけてきた。う゛、ちょっと緊張・・・。

「あ、あ、の、アリタニーヤ河の石を・・・」

「それでしたら、こちらに・・・」

その店員が店の奥の方に案内してくれた。

「あ、シフォン。ちょっと、どこ行くの!」

「あ、う、ん、ちょっと・・・。」

シフォンの行く方向に目をやると・・・

あちゃ〜。噂のエリスちゃんだ。

なるほど。

私から見てもいい女、って言うのかな?

ふわっとした白い毛にエメラルドグリーンの透き通った目。

シフォンといえば、もう魂を抜かれてるみたい。

「お手上げ・・・だね。」

シフォンは放っておこう。

「お客様、こちらになります。」

「あ、ありがとうございます・・・」

「お決まりになりましたらお呼び下さいませ。」

深々と頭を下げて初老の店員が立ち去る。

ふぅ。在るところには在るもんね。

棚のケースにアリタニーヤ河の石が10個くらい・・・。

「うわぁ、高い・・・」

値札には『1200G』の文字。

いつもの相場の3倍くらい。

こんなの買えないよぉ・・・っと、その時。

「きゃ!なんですの!この汚いのは!だれか!」

「は、はい!どうされましたか、イアンお嬢様!」

イアン?!あれがここの有名わがままお嬢様かぁ。

「何ですの、これは!私のかわいいエリスが汚れます!」

「は!申し訳在りません。」

はぁ、絵に描いたようなお嬢様だね。

っと、感心してる場合じゃない。

汚物扱いされてるのはシフォンだもの。

「すいません。家のが何か・・・」

「あーら、また汚いのが・・・」

「え?!」

「猫は飼い主に似るって言うのは本当みたいねぇ。ほほほ・・」

な、なんですと!

「爺!そろそろ出かけます。馬車を。」

「はい。」

「ちょ、ちょっと!」

「あぁ、あなたに一つ教えて差し上げるわ。ここはあなたのような方の来る所じゃなくってよ。」

くっ・・・。

「な、なんですってぇ・・・」

「お嬢様、表に馬車のご用意が・・・」

「ご苦労様。では、ごめんあそばせ。」

不適な笑顔で馬車に乗り込むイアンとエリス。

悔しいけど、様になってる。

住む世界が違うんだなぁ。

「あなたもとんでもないものに惚れちゃったね。」

「え、あ、うん・・・」

「諦めた方がいいかもね。」

「・・・いい感じだったんだけどな・・・」

「だまされてるだけよ。」

「そんなことないって。」

と、そこへさっきの初老の店員

「申し訳ございません。お嬢様が失礼なことを。」

「いえ、・・・」

「お詫びにこれを・・・」

と、差し出されたのはアリタニーヤ河の石が5個。

こんなに買ったら・・・3ヶ月の生活費なくなっちゃう。

「いえ、結構です。」

強がっては見たけど悔しいね。

喉から手がでるほど・・・欲しいもの。

「1つだけ頂きます。」

持ち金1500Gの内、1200G差し出して石を受け取る。

「いえ、お代は結構でございますので・・・」

「そうはいきません。ではこれで。」

はぁ、意地を張らなければいいのに。

でも、あそこまで言われちゃ、引き下がれないよ。

みんなの視線を背中に感じて、退散!

工房に帰ってからすぐベッドの中に入った。

ご飯を食べる気にもならない。

「ねぇ、セフィ」

「・・・・・」

「セフィってば。」

「・・・・・なに?」

「せっかく石を買ってきたのに。作らないの?」

「そんな気分じゃない。」

「時間かかるんでしょ?」

「だったらあなたが作ればいいでしょ!」

「僕じゃ無理だよ。」

「今日はもう寝るの!」

「また、間に合わなくなっちゃうよ?」

「うるさいなぁ。だいたいあなたがバレスター商会に行こう何て言い出さなければ良かったのに!」

「しょうがないよ。ほかの道具屋には無かったんだから。」

「だからってあんなに高いの買ってたら、商売にならないじゃない!」

「でも、注文受けちゃったんでしょ?。」

「他にも道具屋はあるでしょ!」

「買っちゃったんだからさ。」

「何よ!シフォンが女の子に見とれてふらふらしなければ良かったのに!」

「何さ!セフィが意地張らないで、素直にもらっておけば良かったのに!」

・・・・・後は言いたいこと言って、シフォンがあきれてどっかに行っちゃっておしまい。

はぁ〜。まいったなぁ。

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