第11話:でたっ!?
エドさん達と反対方向に分かれて、コムワードの森に向かって歩き始める。
「ね、シェーンさん。あの人達、お知り合い?」
「そうね。冒険者仲間、というか、同業者って感じかしら?」
「何かすごくいい人達ね。最初はチョット怖かったけど。」
「あまり安心しない方が良いわよ。冒険家なんてみんなそうだけど、いざとなったら仲間も売るわ。」
「そ、そうですか?そうは思わないけど…」
「あなたはまだ人生の経験が浅いから解らないのよ。」
「セフィ。そんなに悩むことではないよ。」
「そうですか?レオンさんはどう思います?」
「確かにシェーンの言う事も一理あるとは思うがね。まぁ、自分の感性を信じてみるのが一番じゃないかな。」
「自分の感性かぁ。」
「そうね、あなたが大丈夫と思ったのなら良いんじゃない?それで失敗しても諦め付くでしょう?」
「むぅ〜。」
「セフィの場合は自分が信用ならないからね。」
「うるさいなぁ、シフォンだっていい人達だと思うでしょ?」
「物を貰ったからっていい人とは違うと思うよ。」
「ふふふっ、あなたが一番解ってるみたいね。」
「こいつ、たまに人間より人間のこと解ってるような事言うよな。」
「ねぇジャニス、あなたいつの間にかシフォンの味方だよね。」
「そんなことねぇよ。正しい方について行ってるだけさ。」
「この、裏切りものっ!」
「おいおい、今から仲間割れはやめてくれよ。」
「そうね、さぁ、少し急ぎましょう。予定よりチョットだけ遅れているわ。」
それからしばらくはみんな無口。
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『コムワードの森 北入り口』
「さ、いよいよだ。」
「まぁ、何もないと思うけど一応気を付けて。」
「ね、ね、シェーンさん。ここからどのくらい歩きます?」
「そうね、大体2時間で妖精岩に着くと思うわ。そこでお昼にしましょう。」
「ジャニス、一応隊形は崩さないようにしよう。」
「了解っ!」
「それじゃ、行きましょ。」
森の中って思ったよりも明るいんだね。
ランプ点けなきゃ歩けないかと思った。
でも、あそこの木陰とか、こっちの木の虚とかから何か出てきそうだし、どこか遠くからは何かの声が聞こえるし、こっちの草むらはガサガサ言ってるし…。
「ね、ね、シフォン。」
「なに。」
「あんた、怖くないの?」
「別に。涼しくって気持ちイイよ。」
「もぅ、居眠りしてて落ちても知らないよ。」
「大丈夫。セフィほど寝相悪くないモン。」
「もぉ。」
その時、先頭を歩くシェーンさんが立ち止まった。
「ちょっと待って。」
頭を低くして口に手を当てる。
みんなにそうしろって手で言ってる。
あわてて物陰に隠れるみんな。
「ね、ね、何か出た!?」
「静かにしろよ、セフィ。まだ何も解らねぇ。」
後ろや横を盛んに気にしてるレオンさんと聞き耳を立てているジャニス。
シェーンさんも戻ってきて一緒に隠れる。
「シェーン、20歩先、こっちの方だ。2っつ。何か動いてる。」
ジャニスがシェーンさんに報告する。
すごい!音だけで解っちゃうんだ。
「えぇ、確かにあっちから何か気配がしたわ。」
「敵か?」
「解らないわ。」
「よし、みんなは待っててくれ。私が見てくる。」
「頼むわ。」
レオンさん、だいじょうぶかな?
レオンさんが偵察に行ってからしばらく経った。
こういう時って時間が経つのが遅いんだよね。
もう1時間も待ってる気がしてる。
周りで物音がするたびにビクビクしちゃう。
「セフィ、大丈夫か?」
「う、うん、だいじょぶ、うん。」
そうは言ってみたものの、なんだか息苦しい。
「っ!何か来た。」
「あ、あ、あ。」
「シッ、静かにっ。」
ドックン、ドックン、ドックン、ドックン・・・・
自分の心臓の音しか聞こえない。
「お待たせ。」
レオンさんだ!
もぅ!びっくりしたよぉ〜
もうここから動けないよ。
「どうだった。」
「いや、何も居なかった。ただ…」
レオンさんが手の中の物をシェーンさんに見せる。
「こんな物が落ちてた。」
「へぇ。」
「なんだい、これは?」
「なんかの毛だな。」
「ふふふっ、なんだと思う?」
「解らないよ。ね、怖い物?大きいの?まだ居る?」
「これはね、野ウサギの毛よ。」
もぉ、いきなり目眩がしてその場に座り込んじゃった。
やっぱり冒険て疲れるよ。
「さ、気を取り直して出発よ。」
「ふぇ〜」
「セフィ、行くぞ。」
「どうだった?少しはスリルを感じたかしら?」
「えぇ、もぉ、イヤって言うほど。」
「あははは、大丈夫だよ。そのウチ慣れるさ。」
こんなのに、慣れれるのかな?
何かさっきのバタバタで妙に度胸が着いちゃった。
うん、大丈夫。
みんな一緒じゃない。
「シェーンさん、もう半分くらいかな?」
「そうね、ただ、この辺りからだんだん森が深くなるわ。」
「は〜い。」
「さっきまでとはだいぶ顔色が違うね。」
レオンさんが振り向きながら話しかけてくる。
「そうですか?」
「セフィはいろんな事が顔に出やすいからな。」
「解りやすくってイイでしょ?」
「そうだね。」
??イイのかな??
それからは話しもしないでとにかくシェーンさんの後を着いてみんなで歩く。
どの辺りまで来たかも解らなくなってきちゃった。
かなり深いところまで入ってきたのは確かよね。
日差しはほとんど届かないし、足下の土はかなり湿っぽい。
時々寄生を上げながら見たことのない鳥が飛んでいく。
「ストップ!」
片手を上げて小さく、そして、はっきりとジャニスが言った。
周りの音を一生懸命聞いている顔。
シェーンさんやレオンさんも周りを警戒している。
何だろう?またウサギかな?
私も周りを何となく見渡す。
ボテッ!
すぐ後ろで音がした。
「後ろだっ!」
レオンさんが剣を抜いてこっちに向かってくる!え?なに!
ゆっくり振り返ると…
「ぎゃぁぁぁぁぁ〜」
何か居るよ何か居るよ何か居るよ〜
とにかく必死でシェーンさんの後ろまで逃げてから振り返る。
レオンさんとジャニスが戦闘態勢に入っている。
その向こうに何か居た。
半透明のブニュブニュが2つ。
「ね、ね、シェーンさん。あれなに?」
「ご覧の通りスライムよ。全く、エドのヤツ。何処を見てたのかしら?」
あれがスライムか。もっと丸くってプルルンッ、って感じかと思ってたけど。
あのスライムはブニュブニュしててほとんど平ら。時々端っこが持ち上がっては体の一部を延ばそうとしてる。
「シェーン!どうすればいい?!」
「力づくで良いわよ!遠慮なくどうぞ!」
「じゃ、遠慮なく行かせて貰うぜ!」
ジャニスが腰から短剣を抜いてスライムその1の上に突き刺す。
その瞬間、スライムその1の端が持ち上がり、ジャニスの腹部にめがけて延びてきた。
グシャ!
ドゥフッ!
2つの音が同時に聞こえた。
あわてて飛び退くジャニス。
苦しそうにお腹を押さえている。
「ジャニス!大丈夫?」
「あぁ、油断してたな。このくらいなら平気さ。」
ジャニスが体制を整えるまもなく、レオンさんが剣を振りかざす。
ジャキーンッ!
思いっきりたたきつけられた剣先と地面の間でもがくスライムその1。
ピクピクしてたかと思ったら、青い煙が出てきて水みたいになって消えちゃった。
「っしゃぁ!」
「やったっ!」
レオンさんが1匹倒したっ!
その間にシェーンさんがスライムその2に攻撃!
腰から剣を抜きざまにスライムその2を剣の先で空中にすくい上げる。
「ふっ!」
そのまま為すすべもなくシェーンさんの目の前へと落ちていくスライム。
シェーンさんの胸の高さまで来た瞬間。
シュバッ!
シェーンさんが片手で剣を横に払うと、スライムは煙となって消えていった。
す、すご・・・。