第10話:不安と希望と
しばらく他愛もない話をしながら、くつろいでいた。
「お、奴ら、コムワードの森から来たんじゃねぇか?」
いわゆる「冒険者」スタイルの2人組の男が歩いてくるのをジャニスが見つけた。
「あら・・・」
シェーンが声を掛ける。
「おっ、何処の美人が居るかと思えば、シェーンじゃねぇか。」
「ひひひっ、ひっさしぶり〜。元気してた?」
「えぇ、私は元気よ。あなた達も相変わらずみたいね。」
シェーンさんの知り合いなんだ。
「ところでどうしたぃ?こんな所で。ご一行様でお出かけかい?」
「ひひひっ、シェーンがパーティー組むようになるなんて世も末だね。」
「ちょっと、ペレータ。それどういう意味よ?」
「けけけっ、あんたがパーティー組んで行くってぇことは、よっぽどのトコに行くんか?」
「そうだぜ、あんたほどの人と組んでるって事は、この方々も大層なモンだ。」
「あ、あの!お茶どうですか?」
「おっ、いいねぇ。ありがてぇ。頂くとしようか。」
「ひひひっ、パーティー組むならやっぱり女の子がイイよなぁ。なっ、エド!」
「そりゃそうさ、組めるモンならそうしてるって。」
ずいぶんおしゃべりな人たち。
「はい、どうぞ。」
「あ〜すまんすまん・・・・・・んっ!んん〜っ!!!」
「あ、あ、まずかった?ですか?」
「ん〜め〜な。これは旨いわ。いや、久々にこんな旨い茶頂いたよ。」
「あ、ありがとうございます。」
「所で一つ聞きたいんだが。」
レオンさんが話に入ってくる。
「おぅ。」
「あなた方、コムワードの森から来たとお見受けするが。」
「そう、その通り。ま、ただ通過してきただけだけどな。」
「また遠くまで遠征に行ってたの?」
「いやぁ、サレルヴェイからこっちに抜けてきただけだ。今回は結構な収穫があってな。」
「ひひひっ、そういうことよ。これからナステリアに行って売りさばいてくるのさ。」
なんかすぐ話がどっか行っちゃう人たちだね。
「あ、あの!コムワードの森。どうでした?」
「あん?どうもこうも。いつも通り平穏無事だわ。昼寝も出来るくらい平和だぞ。」
「くくくっ、なんせスライムも出なかったからね。」
安心したのと、チョットだけがっかり。
「エド、サレルヴェイから来たって事は東から森を抜けてきたの?」
「いや、山を回るのめんどくさいからな。南からきた。」
「南から抜けてスライムも居ないの?」
「あぁ、拍子抜けさ。」
「・・・なんか変ね。」
「やっぱりシェーンもそう思うか。」
「しししっ、みんな昼寝してたんだよ。考えすぎだって。」
「んで、シェーン。これから何処に行こうってんだい?」
「コムワードの森までお散歩よ。」
「そうかい。でも、又なんで。」
「訓練よ、みんな冒険初心者なの。」
「う゛ぇ?!シェーンが?初心者と組んだの?」
「そうよ。こっちは凄腕の兵隊レオン。こっちは鍵開けの名人ジャニス。そしてこっちは有名精錬術師セフィアとその助手のシフォン。」
「・・・なるほどなぁ・・・冒険は初心者でも、それだけのモン揃ってりゃ言うことねぇや。」
「ひひひっ、あんた精錬術師かい。今度なんかあったら色々頼むわ。精錬術師っていやぁ、ばーさまばっかだからな。」
「そそ、行く楽しみもなくっちゃ。あぁ、そうだ。お近づきの印に・・・これ。やるわ。」
エドさんが袋から出したのは綺麗なエメラルドグリーンの石。
手にとってびっくり!
「こ、これって!?」
「そうさ、やっぱり解るかい?っま、あんたくらいになりゃ解るだろう。お茶代だ。受け取ってくれ。」
「ほんっとに頂いて良いんですか?」
「あぁ、あんたならかまわねぇ。どっかに高値で売り飛ばすつもりだったがな。」
「あ、ありがとうございますっ!」
「セフィ、それは何だい?」
「これはね、えっと・・・。」
「ティシア山の山頂にしかない”幻の水岩”っていわれてる物。ホントは”エメラルド・カウス・ストーン”って言うんだけどね。」
シフォンが偉そうな顔で横から出てくる。
「今言おうとしたのに〜。」
「おっ!こいつファントマ付けてるよ。いやぁ、大したモン持ってるな。」
あわてて後ろに下がるシフォン。ファントマ取られると思ったのかな?
「だろう?俺もこいつが喋ったときはびっくりしたさ。」
ジャニスがシフォンを捕まえてくる。
「おぅ、このファントマってのはよ、作れるのは一握りの精錬術師だけだ。この辺りじゃナステリアのゼニスのトコだけか?」
「あ、それ、私のお母さん、です。」
「くくくっ、ゼニスの娘さんかぁ。そりゃすげぇや。」
「あぁ、あの人の娘なら間違いねぇや。シェーン、大したお方と組んだな。」
「そうよ。私が組んだパーティーよ。」
「ちげぇねぇ。さて、そろそろ行くとするか。悪いね。しっかりご馳走になっちまった。」
「さ、私たちも出発しましょ。」
みんなで片づけて。
出発!