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第1話:いつもの朝・・・

 窓から入ってくる木漏れ日で目の裏が赤くなっているのに気づいた。

「ぅ〜ん・・・また寝坊しちゃった・・・」

布団の中でため息とあくび混じりにつぶやく。

今日もいい天気だ。雲が気持ちよさそうに浮かんでる・・・

??なんか足の上が重たい・・・

・・・ゴソゴソ・・・

「ほぁ?あ、おはよ。」

「あんたねぇ、いっつも人の上で寝て。」

「ふぁ〜・・・だって気持ちいいんだもん。」

伸びをしながらシフォンが答えた。

はぁ、飼い主に似るって言うけど、朝寝坊まで似なくても・・・

「そんなこと言って!きちんとしないとエリスに嫌われちゃうよ」

「うるさいなぁ。だいたい自分が寝坊したのに。そんなのセフィに関係ないでしょ!それより寝坊ばっかりしてるとレオンに忘れられちゃうよ。」

「うるさーいっ!猫の分際でぇ!ファントマ取っちゃうぞ!」

「イイよ、別に。僕は不便しないから。」

「じゃあイイ。ご飯つくってやんないんだから。」

毎朝の家の出来事・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 あ、初めまして。私はセフィア。

セフィア・フレストームって言います。

セフィって呼ばれてます。

こっちは、私の相棒ってことにしておこうかな、シフォン。

ブラックジャイアントっていう猫なんだけど、全然大きくないの。

本人はコンパクトに納めたっていってるけど、早い話がチビ。

普通のブラックジャイアントは倍くらい大きいからね。

シフォンが子供の頃に私が拾って来ちゃってからずっと一緒にいます。

何で猫がしゃべれるかっていうと、首にぶら下げてるファントマのおかげ。

これは私のママがつくった魔法の石。

この石があれば猫でもしゃべれるようになるんだって。

もちろんシフォンに合わせて精錬したモノだから効くんだろうけど。

私のママは精錬術師。

いろんな物のエレメントを使って、いろんな魔法のアイテムをつくってる。

エレメントって言うのはいろんな物に入ってる魔力みたいな物かな?

それを取り出して、凝縮して、召還させて、いろんな物を造るの。

ファントマとかね。

いまはパパと一緒にナステリアに住んでるの。

ナステリアって言うのはここファレリア王国でも1番大きい町。

ファレリア城の城下町。

そのナステリアで精錬術師をやってて、ファレリア王立軍の使う剣とか造ってるんだって。精錬術師は使う人に合わせて、いろんなエレメントを調合して、軽くて丈夫でその人の引き出せる魔力を持った剣を造るの。

その人ごとに引き出せる力が違うんだって。

体質みたいな物かな。

ママはその辺の調合がすごくうまいってパパが言ってた。

パパの剣、トランサルファもママが造ったの。

その剣でパパは有名になったんだって。

今は王立軍でファレリア城の警備をしながら、王立軍の士官学校で先生をしてるの。

わたしはママに教えてもらって精錬術師を目指してる。

この間、やっとエリフィールウォーターを作れたんだ。

あ、フィールウォーターって言うのは、体力を回復させる水。

精錬術師なら誰でも作れるくらい簡単な物なんだ。

そのフィールウォーターの濃いのがエリフィールウォーター。

ちょっと難しいんだよ。

エリフィールウォーター1本ときれいな水があれば誰でもどこでもフィールウォーターを20本作れるんだ。

薄めればいいだけ。

それで、エリフィールウォーターが作れるようになったっていうんで見習い卒業!

一応人の役に立つ物何か1つでも作れれば1人前として、自分の工房をもてるんだ。

少ない貯金をはたいて、やっと造った私の工房がここ「精錬工房せふぃ」

どうにか1人と1匹が食べていけるだけは稼げるようになったって感じ。




 とにかく私は朝が苦手。

一緒にいるシフォンも朝が苦手。

っていうよりはシフォンは寝てるのが好きって感じかな?

家にいるのはこの2人だから誰も起こしてくれない。まぁ、朝早く起きなくても困ることはないんだけどね。

でも最近は出来るだけ早起きしたいんだ。



〜1週間前〜

「ねぇ、セフィ。間に合うの?」

無理な注文を受けちゃったからしょうがないんだけど、もう2日間も寝ないで精錬をやってる。

明日の朝までにって言う注文なんだもん。

お客さんが明日から冒険に行くみたい。

「わかんないけどやってみなくっちゃ。お客さんは明日の朝取りに来るって言ってたんだから。ねぇ、今何時?」

「え〜っとね、3時すぎたよ。」

「へ?まだ夕方?」

「違うよぉ。朝の3時!」

「え〜!あと4時間しかないよぉ!間に合うかなぁ?」

「寝ぼけてないようにね。」

「しょうがないじゃない。もう2日間も徹夜だよ。」

「まぁ、しょうがないね。あんな無理な注文受けちゃうんだもん。」

「だってぇ、仕事やらなきゃ食べていけないよ?」

「ほら、急がないと。」

「あ、いくつやったっけ?」

「まったくぅ。あと12個!」

「あ、そうそう!わかってるって!」

「・・・不安だな・・・」

「ちょっと黙ってて!これは集中しないとエレメントを取り出せないんだから。」

「はいはい」


インテルス山の石を水晶の台の上に置く。

この水晶の台は私が最初に造った物。

っていってもママが造ってるのを少し手伝っただけだけどね。

こんな物、私に作れるはずがないモン。

今でも難しいんじゃないかな?

材料が高いしね。

その水晶の台に乗せた石に手を当てていると何となく暖かくなってくる。

その暖かいのをそーっと上に持ち上げると・・・・・・

あれ?もう1回。

そーっと、集中して・・・・

よし!出てしまえばもう戻ることはない。

「ふぅ、いつ見てもきれいだね。インテルスエレメント!」

青緑に光る半透明のふわふわした・・・・見てると落ち着くんだ。

「早くしないと酸化しちゃうよ。」

「わかってるわよ。・・・いしょっと」

エレメントキーパーって言う箱に入れる。何とかっていう木で出来てるんだって。

忘れちゃったけど。

これも私が造った物。

っというより私が手伝ってママが造った物。

これくらいは今なら作れるかな?

「よぅし。次・・・」

「早くしないと間に合わないよ」

「大丈夫、後10個くらいだから。」

「気を付けてよ。インテルス山の石はエレメントを出すときに壊れやすいから。」

「は〜い。わっかりました。シフォン大先生。」

「もぅ・・・先に寝るよ」

「あれ?いつでも寝てたんじゃなかったっけ?」

「そんなこと言ってると、最後の袋詰め、手伝わないよ。」

「大丈夫!たたき起こすから!お休み!」

「ふぁ〜。どうせそんな事だとは思うけど。先に寝るよ。おやすみ・・・・」


パタパタパタ・・・ガシャ〜ン!

「あいたたた。」

ここも片付けなくっちゃ。

「ねぇシフォン!ちょっと。」

気持ちよさそうに丸まっているシフォンのしっぽを引っ張る。

「ふぅ?朝?」

「手伝って!。」

「・・・袋詰めを?・・・」

「そう!これは君が居ないと出来ないんだから!」

ゆっくり伸びしてるシフォンを私が抱えて走る。

「早く!時間ないんだ!」

「へ?・・・あ?・・あぁ!!もう約束の時間すぎてる!」

「そうなの!お客さん広場で馬が来るの待ってるって。」

「急がなきゃ!」


大きな壺の中身を小さな袋に移すのは大変。

シフォンに袋を持っててもらわないと入れられないんだ。

「そ〜っとだよそ〜っと・・・」

「わかってるわよ。でも急がなきゃ」

「駄目だよ、そんなにあわてちゃ。エレメントがまだ落ち着いてないん・・・・・」

「はいはい、ここくわえててね!」

「んんんぐぐんん!」

そーっと、そーっと。でも急いで急いで!



ふぅ、袋詰め完了!

「よし!急いで持っていこう!」

「馬を待ってるって事はセントラルパークの隣?」

「そう!いこう!」



〜1時間後〜

私はセントラルパークのベンチに座っていた。

あぁ〜いい天気なのにね。

「これ、どうするの?」

「どうしようもないよ」

「捨てちゃうの?」

「捨てたい気分だよ。」

結局間に合わなかった。付いたときにはもう出発した後だったんだもん。

がんばったのにね。

「だから急げっていったのに」

「しょうがないでしょ!あれからインテルス山の石が4個も割れちゃったんだから」

「あぁあ、あれほど言ったのに。」

「わかってるわよ。・・・そうはいってもどうしよう。こんなにたくさんのエリフィールウォーター」

「誰か買ってくれないかな?」

「ここじゃ無理だと思うよ」

「それもそうね」

「ナステリアに行って売る?あそこなら売れると思うよ。」

「行くのめんどくさいなぁ・・・・」

「確かにね・・・」

途方に暮れる1人と1匹。絵にもならないね。


しばらくぼ〜っとしてたら、男の人が歩いて来た。

年は同じくらい。

結構背が高くって、背筋がぴ−んとしてて・・・

軍服を着て、腰から剣を下げて・・・

何だろう?私に用があるのかな?

っと思ったら、日の当たるところに立ち止まって剣を抜いた。

素振りでもするのかな?

・・・

「ねぇ、あの人さっきから何してるんだろ?」

もう、半分寝ているシフォンの耳をつまんで小声で聞いてみた。

「ん?あぁ、剣にサンエレメントを吸収させてるんだろ?」

半分だけ目を開けて。眠たそぉ〜・・・

「ふぅん、太陽に当てるとエレメント吸ってくれるんだ」

「精錬術師ならその位わかってなきゃ。火の泉っていうエレメントって知ってる?」

「う、うんうん。えっと、海水のエレメント・・・だったかな?」

「それは火の水。火山の石のエレメント。」

「あ、そうそう。駄目だねぇ。寝てないから、寝ぼけてるね。」

「1年中寝ぼけてるんだね。」

「もぉ」

「その火の泉を剣に召還させると太陽光からエレメントを補充してくれるんだ。」

「へぇ。エレメントって減っていくんだ。」

「攻撃の仕方によってはね。エレメントを減らしたぶんダメージも大きい。」

「ちょっと見せてもらおうか?」

「え?」


「あのぉ」

「はい?」

「その剣、火の泉が召還されてます?」

「ええ。よくわかりましたね。」

「あ、へへ、一応、私精錬術師ですから!ぐっ!!」

いきなりシフォンに噛みつかれた。

イイじゃない。私だっていいとこ見せたいもん!

「あぁ!そうなんですか。さすがですね。」

「いえいえ、そんな・・・あのぉ、よければ少し、見せていただけませんか?」

「へ?あ、ええ、構いませんよ」

剣を受け取った。

(うわ、おっきい)

この人が持ってるときはそう見えなかったけど、とっても大きい。

これだけの大きさに召還させるのって、大変なんだろうな。

へ〜、こういうの作れるようになりたいな。

「良い剣ですね。」

「ありがとうございます。精錬術師の方にそう言っていただけるとうれしいな。いつも太陽に当ててた甲斐があったかな?」

優しそうな笑顔で話しかけてくれる。

ぼーっとしてるのは寝不足だけじゃなさそう・・・

「毎朝、こうしてるんですか?」

「天気のいい日はね。登城する前いつも」

「へぇ・・・登城って言うことは王立軍の方ですか?」

「はい!ファレリア王立軍装甲兵隊第2師団ファレリア城警備担当のレオン・ファスターです!」

すごい!レオンさんってまるで兵隊さん!って、兵隊さんなんだよね。

「バーンタウン精錬術通り「精錬工房せふぃ」のセフィア・フレストームです!」

ついついつられて、私まで兵隊さんみたいな自己紹介しちゃった。

「あ、今の挨拶変でした?」

驚いたような顔で私の顔を見てる。

「すいません。もう1度やり直し。バーンタウンの精錬術通りで「精錬工房せふぃ」っていう小さい工房をやってます。セフィア・フレストームです。セフィって呼んでください。」

「あの・・・」

「はい?」

「つかぬ事を伺いますが、お父上はフレストーム少将であらせられますか?」

「はい・・・」

あ、そうか、パパは王立軍の学校の先生で、ファレリア城の警備をやってるんだ。

「父をご存じでした?」

「はい!士官学校の時の教官で、今の上官でもあります。」

「は・は・は・」

なんか、恥ずかしいよね。

「フレストーム少将から、お嬢様が精錬術師を志していると伺っておりました。まさか、こんな形でお会いできるとは思っても・・・・」

「あのぉ・・・」

「はい!」

「あまりかしこまらないでください。そう言うの苦手で・・・」

「あ、すみません。ついつい少将の身内の方なので・・・」

「私は軍の人じゃないですから・・・」

「そうですね。すみません。あ、そろそろ時間なので、失礼します!」

って、あなた人の話聞いてた?敬礼なんかして・・・

「あ!ははは・・・すいません。いつもの癖なんですよ。」

ふふふっ。お互いに笑っちゃうね。

「また今度お会いしましょう!天気のいい日はここにいます。」

「わかりました。ガンバって行ってらっしゃい!」

「じゃ!」

あぁあ、行っちゃった。なんかいい感じだったのになぁ・・・

「ねぇ、目がうつろだよ・・・」

は!シフォンがいたんだ。忘れてた・・・

「は!・・・うるさいわねぇ。いいでしょ!」

「恋する乙女はつらいねぇ。」

「そんなんじゃないってば!」

「じゃぁ、どんなのさ。」

「う〜ん・・・まだ予感・・・くらい」

「同じだな」

「むぅ・・・・・さ、かえって寝よう。」

「それでどうするの?これ」

「あ、そうか。」

いきなり現実に引き戻されちゃったな。

どうしよう。

行き場のなくなったエリフィールウォーターたち。

「とりあえず持って帰りましょ。」

「こんなに飲んだら目が冴えちゃって寝れなくなるよ。」

「自分で飲むなんて言ってないでしょ!ほら、帰るよ」

「ふぅぁ〜、眠たぃ・・・」

「そうね。帰ったら寝ましょ。今日、お店はお休み・・・」

「そう願いたいね。」

「ふぁ〜・・・」

帰り道のエリフィールウォーターの重たさったら、もぅ・・・・

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