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『こんにちは、京君。
京君と会ってから二回目のクリスマスがやって来ました。バイト先の店長ったらね、クリスマスは恋人と過ごせとか言って無理矢理お店の若い子休ませちゃったんだよ。あたしは勿論そんなの居ないから早目にケーキ食べて手紙書いてるの。
京君の居る場所のクリスマスってどんな事してるんだろう? クリスマスとか行事はやってるのかな?
でもなくてもすぐ来るお正月とかは少しくらい休みなんでしょ? 京君達もだけど、其処に仕事しに来る人達の為に休みないと大変だもんね。
あたしはもうそろそろで卒業だよ。無事に学校も受かって、これからも色々とお金かかるからバイト三昧なんだ。何の専門学校だか気になる?
教えてあげなーい。会いに来てくれたら教えてあげるよ。だから、楽しみに待ってるね。
……あぁ、折角のクリスマスなのにまた殺人事件のニュースだ。こっちではやっぱりまだ戦争が終わってないの。それなのにクリスマスで平和に見えるなんて残酷だ。
あのね、まだ、此処に来る前までの事を考えちゃうんだ。あたしが都会に居た頃の事。
あたしが心を病んだ場所で、今度は違う子がR指定物を見てるんじゃないかって思っちゃう。心がマヒしちゃうんじゃないかって不安になるの。
今も、子供達は場所に限らず汚染されてるのかな。そしてあたし達みたいに、絶望しちゃうのかな。
そんな子供達に気付かないで、大人は、世界はまだ平和を嘘みたいに唱えてるよ。嘘みたいに、望んでるって言ってる。
京君、世界はどうなるんだろう。人間同士が殺し合う世界で、どうやって育てって大人達は子供に言うんだろう。
犯罪を犯した人が悪いの? 犯させた環境が悪いの? それともそう教育出来なかった親が悪いの? やっぱり……そう育った子供が一番悪いのかな。
京君、君が其処から出て来てまたこの世界で生きられるのかとても不安なの。京君を知らない人は、そういう目で君を見るから。
どんなに声を張り上げて、本当は違うんだと叫んでも君がした事は変わらないから悲しくなる。また君が、飛ぼうとしちゃう気がするの。
だから、ねぇ、何にも出来ないかもしれないけど、迷惑だとかどうせ分からないとか思わないであたしを頼って。どうかあたしの知らない場所で飛ぼうとしないで。
君の生きる意味が此処にあるから、それを置き去りにしたままにしないで。一緒に、希望を探そう。ありふれた言葉だけど、それしか言えないよ。
あたし、京君に訊かれた『どうして生きてるの?』って質問、はぐらかして答えてなかったよね。あれ、今でも分かんないんだ。だけど、だけどね。
人間って〝生きたいから生きてる〟んじゃないかな。〝自分の為〟に、生きて良いんじゃないかな。
それは自分さえ良ければそれで良いって事じゃなくて、もっと大切な事がその中心にあるの。それが何かはあたしにもまだ分からないけど、いつか見付けられるよ。
この世界に、永遠はないから。
あたしが生きてる間にその答えが見付かって京君に教えられたら良いな。それじゃ折角のクリスマスに書いた手紙がこんな内容だけど、大切な事だから良いよね、なんて。
京君に、サンタさんが来ますよーに。
──倉林紗愛』
京は紗愛からの手紙を読み終わるとすぐ机に向かった。他の三人はもう眠って居る。京が手紙を読む為に点けたライトが眩しいからと三つのベッドには、カーテンで閉められていた。
京はノートを便箋代わりにして紗愛に返事を書き始める。
まずは、久し振りからだ。それから手紙ありがとうと書き、返事が遅れた経緯を手短に書く。
京は夜更けと共に手紙を綴る事に没頭して行った。