ベルソートの朝
戦いを入れられないOrz
其所は何処までも紅く、黒く、蒼く、それらの色が混じり合い混沌とした世界。もしも、地獄という場所が在るなら、其所は正しくこのような場所の事を言うのだろう。
何故、こんな所に居るんだ?おかしい、おかしい、昨日俺は…… 思い出せない俺は誰だ。解らない、解らない、解らない、紅と黒と蒼の渦が迫って来る。
熱い、血の一滴まで燃やし尽くすような熱さが襲って来る。
それでいて、寒い。
身を斬るような寒さが、
熱さと共に襲って来る。
熱い、寒い、誰か、誰か助けてくれ!!
そう叫んだ時、
「起きろッ」
「グガッ!?」
腹に鋭い痛みが走る。
「何すんだ、コノヤロウ!!」
腹を押さえながら、目の前の人影を睨み付ける。
「いやぁ、なんかうなされてたみたいだから、起こした方が良いのかなぁ、と思って。」
「それにしても、やり方が有るだろ?いきなり腹に正拳突きはネェよ。」
「これは我が、ナソトリュア家に代々伝わる伝統的な起こし方なんだよ!」
「ウソだろ?」
「うん、ウソ。」
腹の痛みも引いてきた。
右手を握りしめ相手の腹を殴打する。
「ケポォ!?」
そんな奇声を発し、悶絶する女が一人。
ケイト・レメーシュ・ナソトリュア
一応は俺の友人だ。
短く切られた赤い髪と猫のような切れ長の茶色の目が特徴的な美人。
帝国で天才と呼ばれるほどの科学者兼魔法使いだが、性格は変人、奇人としか言い様の無い。ペルポウコス仕官学校のいた時に知り合った。
「女の子に手を挙げるなんて、男として最低だよ!」
「お前も知っているだろ?俺は男でも、女でも殴る。正拳突きのお返しだ。甘んじて受けろ。」
俺の後ろで、まだブツブツ言っている変人を尻目に、俺は洗面所に歩いて行った。
顔を洗い鏡で自分の顔を見つめる。
手入れのされていない肩まで伸びたボサボサの黒髪と多少つり目気味の黒い目、顔立ちはカッコいいと言われたことがある(髪型を抜かせばだが)自分では周りの評価は関係ないと思っている。
「ねぇ、まだー早くご飯作ってよー。」
居間からケイトの声がする。メシ作らなきゃな。
メシを作りながら、今日の夢の事を考える。
久しぶりに見た悪夢だが、何か普通の悪夢とは違う。本当に其所に居たみたいに熱かったし、寒かった。
ふと気付くと、卵焼きが少し焦げていた。
「よし、食え。俺特製卵焼き!」
「俺特製って、ただ焼いただけじゃん!」
「じゃあ、喰わなくて良いぞ。俺が喰うから。」
「食べます!食べます!うわぁ、美味しそうだなー!」
勢い良く食べ始めるケイト。
ガツガツと食い散らかす様は、他の人には見せられない。
「なんで俺ん家でいつもメシ食ってくの?」
頭に浮かんだ疑問をケイトに問い掛ける。
「いつもは、食費を浮かすため。今日は、ちゃんと理由が在って来たの。」
「理由?」
「そ、理由。……ッと有った。はい。」
目玉焼きとパンを食べ終えたケイトが鞄から手紙を取り出した。
「誰からだ?」
宛名を見ると昔世話になった知人の名前だった。
「リンメーおじさんか、懐かしいな。」
手紙には祭りがあるので来ないかと言うことが書いて有った。
「久しぶりに会ってみたいし行くかな。」
「ベルずるい!私も行きたい!」
「お前は仕事があるだろ。」
このあと、ふてくされたケイトをなんとか宥めて、家に返し旅行の準備を始めた。