写真
写真と言えば、いろんな場面を切り取り画像にする。
思い出や記念写真だけが、写真だけではない。せっかく撮ったが、中には消してしまいたい写真もある。
今日は軽く飲んでいた。赤提灯が誘った訳でもなく、誰かの祝い事でもないが、自然とそういう流れになってしまった。
みんな酔いがまわり、足下手元がおぼつかなくなってきた頃、後輩がトイレに行こうと立ち上がった時ド派手に転けた。
幸いケガはなかったが、なぜか鞄の中身と財布の中身が床に散らばったいた。
散らばった中に運転免許証があったらしく、誰かがくすこの何気に始まった酒宴の席を時計回りに回っていった。
見る人間が順に爆笑が起きていた。
「お願い返してください」
という後輩の懇願の言葉も全く聞き入れられず、見た人間が爆笑と共にその場に転がるという現象が、とうとう俺の場所にも到達した。
みんな酒も入ってるし、そんな大した事なかろうと思って、ビールを煽りながら運転免許証に目線を落とした。
俺の目に飛び込んできたのは・・・
アフロ!アフロだ!なぜアフロ?
これに黒縁メガネの落書きすれば、若いこの釣瓶そのものだ。
鼻から鼻水以外を最近出した事があるだろか、少々考えたがこの十年近くそんな行為をこの身におきた事はない。その十年の牙城が一枚の運転免許証によって、簡単に崩されそうになるとは、小学生の頃よく鼻から牛乳を出した出させた記憶はある。この年になって、小学生の記憶を彷彿させる憂き目に合うとは思わなかった。
鼻からビールを出るのを必死に押さえ、俺をこんな目に合わせている元凶をビールをうまそうにあおる、隣の人間の眼前に突き出した。ビールを飲みながら、目だけ俺が差しだした免許証に落とした。
ジョッキからリズム良く減っていたビールがピタっと止まった。少し前の俺と同じ境遇に簡単に陥った。すげぇなこの免許証。
みるみる間に頬が膨れてきた。きたきたっと思ったが、そこから動きがない。こいつのこの我慢強さ尊敬できる、それぐらいこの免許証は破壊力があるのだ。
ダメだこのままでは、吹き出す前に頬にまできたビールが胃に収まってしまう。
俺は、免許証から目をそらし必死に笑いを堪え、喉の奥底にビールを流し込む作業に没頭しているヤツの肩を叩き眼前に免許証を突き出した。
これで終わりだ。俺はそう心の中でつぶやいたその時、ビールが霧状になって飛び散った。
「返してくださーい」
免許証の写真の本人が、俺の右手めがけて飛び込んできた。
渡してなるものか、こんなおいしいネタ。
俺は飛び込んできた後輩の脳天にチョップをかまそうと右手を振り上げた時、「バッシィ」と音と共に後輩が床に伏せた。
俺のチョップより先にビールを口から垂らした、奴の張り手が後輩の脳天に落ちていた。その後に怒声が響きわたった。
「おめぇ俺を笑い殺す気か!」
気持ちは分かるが、なんちゅう言いがかりだ。
しかし、免許証の写真って笑えるのが多いんだ。