打ちつける砂
海からの風が前髪を吹き上げる。沈もうとするオレンジ色の夕日。
目を細めながら眩しそうに見つめる彼。
白いシャツの中の茶色のタンクトップから控えめな筋がのぞいている。
灰色の影がすーっと寝ころぶ白い肌。
長めの黒髪を耳にかけるようにかき上げて、にっと笑った。目尻がしわでくしゃっとなった。
「なんか久しぶりだね」
使い古された陳腐な言葉。ありきたりのシュチュエーションにはぴったりかもしれない。
私は茶色のヒールが高いサンダルの先を見つめ、小さな砂利を蹴飛ばすように歩く。
夏の前に塗ったオレンジのラメ入りのマニキュアがところどころ剥がれている。
海の近くは風が強くて、思わず眉間にしわを寄せ海の奥の太陽を睨む。
そんな私を横目で見ていた彼は、海の方に顔をそむけてふっと笑ったのが分かる。
「そんな顔すんなって」
2,3ミリの剃り残しをサラサラと手でなでながら言った。
ばんっといきなり背中を叩かれ、よろけた。