第八話 仕事
「汀、仕事の依頼だ。仕度しろ。」
着替えて部屋から出てくると、目の前に十六夜が仁王立ちしていた。
こうも連続で仕事が来ると、休む暇が皆無なので誰かぶっ倒れるんじゃないかと思うのだけれど…。
まあ、仕方ない。
私達の仕事は、妖を狩ると書いて妖狩と呼ばれる。依頼は人間、妖どちらからも来る。
一応仕事なので報酬はあるが、いつも金品とは限らず、山ほどの野菜だったり由緒ありそうな美術品だったりする。
紅ちゃんによれば、ごく稀にとんでもないものを報酬として提示してくる人もいるらしい。
私はまだそういう事例に遭ったことはないが。
「場所は?」
「比奈ヶ丘だ。3匹ほど暴れているらしい。」
比奈ヶ丘とは、この家からほど近い場所にあるなだらかな丘だ。
四方を木に囲まれ、頂点には小さめの花畑がある。
よく近所の子供が遊んでいる場所だが、同時に妖達にとっても集まりやすい場所のようだ。
夜になると連日妖による宴が開かれている。
「今回は捕獲の仕事だ。睡眠薬は持っているか、汀?」
「持ってる。」
バッグから瓶を取り出し、じゃらじゃらと音を立てて振る。特殊な草から作られているこの薬は、強力な催眠薬だ。
口に放り込めばあら不思議、すぐにすやすやお寝んねというわけである。
…放り込むまでが、大変なのだが。
「紅ちゃんは?」
そう問いかけると、十六夜の後ろからひょいっと赤い毛が覗いた。
「俺はもう準備オッケーだよ~?」
紅ちゃんはいつもの深紅の腕輪、そして十六夜は黒革の手袋を身につけている。
これらの道具は、私達半人半妖の者たちが妖の力を引き出すために使う物だ。
妖狩達はそれぞれ一つずつ、自分の使う道具を持っている。他人の道具を使っても妖の力は出ない。
まあ、魔法使いにおけるオーダーメイドの杖のようなものだと思ってくれればいいはず。
ちなみに私は、黒い鞘に納められた、長さ1.1mほどの刀である。
…他の二人はそれぞれの能力に合った(例えば紅蓮の場合、火を扱うので赤)色の道具を持っているのに、しかも他の仕事仲間もそうなのに、私だけ、なぜ違うのか。
まあ、水色の刀にしろ、とは言わないけど。
「被害者は?」
「今のところいないって。さっさと捕まえちゃお~」
紅ちゃんはいつもの人懐こい笑いとは違う、獰猛な笑みを浮かべながら十六夜を捕まえるような仕草をし、十六夜に頭をはたかれた。
その十六夜はと言えば、拳をポキポキと手袋の上から鳴らしている。…こいつ、肉弾戦好きだもんなぁ。
私はやる気満々な男二人にそっと溜息をつき、刀をつかんで二人に言い放った。
「行くよ、二人とも。ちゃちゃっと終わらせてご飯だご飯!」
言い終わるが早いか、紅ちゃんはすでに家から飛び出していた。
ちょっと書き方が変わった…ような気もする…かなぁ?