第四話 食事風景と疑問
「みぃちゃん、俺の分も朝飯ある?」
みぃちゃんは私の事だ。彼は誰にでもニックネームを付けたがる節がある。
ちなみに十六夜は『いざちゃん』と呼ばれているようだ。
紅ちゃんが私の頭をがしがしと撫でる。振り向くと、真っ赤な目がぱちくりと瞬きした。
紅蓮は、火の妖と人間の女の間に生まれた。
気さくな性格で、私の事を良くかまってくれる。
赤茶色の短髪に、燃え盛るような赤い目。
十六夜と同い年ながら全く正反対の性格をしていて、それでも二人は仲良しである。
「いざちゃーん。寂しくなかったかい?」
「むしろいない方が静かで良かった」
仲良しだ。
「つれないなあ。俺、寂しくて死にそうだったのに…」
「じゃあ死ね」
仲良しな、はず。
「またまたぁ~。照れ屋さんだねぇ、いざちゃんは」
「もうお前黙れ」
……まぁ、ケンカ友達ってことで…。
二人のやり取りに苦笑しつつ、紅ちゃんの朝ご飯を用意する。18歳の男なんてそりゃあもう食べる食べる。
十六夜もすっかり食べ終わってるし。
反して私は小食なので、少しの量で足りる。だから大きくなれないのだろうか…。
ちょっとしょんぼりしながら紅ちゃんに朝食を運ぶ。そんな私に気を遣ったのか、十六夜が珍しく手伝ってくれた。
私は、一つ疑問に思っていることがある。
何故、私がこの家で暮らしているのか。どうして、親と一緒ではないのか。
半人半妖の子供たちは、大体が親と共に暮らし、普通の人間と同じように育ち、家から独立していく。
けれど、私にはそれが無かった。7歳になって間もない頃、突然ここに連れてこられた。
その時にはもう、十六夜と紅ちゃんが居て。
父さんと母さんは、どうしているのだろうか…。
二人の家を、昔住んでいた家を訪ねたら、もう取り壊されていた。
じゃあ、二人はどこへ行ったのだろう。
紅ちゃんや十六夜に聞いても、うまくはぐらかされて聞きだせない。
けれど、あの二人は絶対何か知っている。
隠し事されるの、あんまり好きじゃないんだけどなぁ…。
「……むぅ…。」
「みぃちゃん?どうした?腹でも痛いか?」
考え込んでしまった私に、紅ちゃんが慌てて声をかける。
気がつくと、十六夜までこちらをしげしげと眺めていた。
「え、あ、いや、べ、別に……何も…」
我ながら下手な誤魔化し方だとは思うが、二人を心配させるわけにはいかない。
何とかはぐらかし、二人を強引に買い物に連れだした。