第二話 この世界
「うん…んんぅ?」
朝日が目に刺さる。余りの眩しさに私はむくりと起き上がり、辺りを見回した。
哀しいくらい、何もない部屋。タンスと、本棚と、布団。そして私。
紛れもなく、私の部屋だ。
「あっれ~…おかしいなぁ…?」
確か、学校に行って…一匹消してきて………そこから記憶がぷっつりと消滅している。
まるでそのままそこに置いてきたかのようにぽっかりと穴があるのだ。
もう一度しっかり部屋を見回そうと起き上がったその時、ガチャと部屋のドアが開いた。
「やっと目が覚めたか…一匹でアレとは情けない。」
嘲笑混じりの声と共に、私と同じ漆黒の髪を持った男が入ってくる。
何か言い返そうとするが、その冷たい視線に射すくめられ、顔を顰めることしか出来ない。
この世界は、そちらの世界とは少し違うようなので、説明しておこう。
私達の世界には、大きく分けて三種類の種族がいる。
人間とそれ以外の動物、そして妖。
もちろん私とこの男は人間である。
ただ、他の人間とは少し違うところもあるが…それはまた別の機会にしよう。
今は種族の話のはずだ。
妖――あやし、ようと読む――とは、大まかに言ってしまえば人間・動物以外のものを指す。
その姿は普段は見えない。彼らの姿を見られるのは、妖か、その血が流れているもの。
彼らには失礼だが、「化け物」の類いだと思ってくれればいい。
ただし、彼らが人や動物に危害を加えることは少ない。私達人間は妖達と比較的友好な関係を築いている。
両種族間での交流も多く、何より妖達の技術は人間側にとっても大変役立つ。
例えば、服について。
彼らは古来より獣や鳥の皮を剥いで衣服を作ってきたらしいが、その軽さ、肌触りは到底人が辿り着けぬような境地に至っている。
何でも、特殊な術をかけてそのようにしているのだとか。
それ故に衣服を扱う人達はこぞってその術を使える妖を雇いたがっているらしい。
一度、小学校の社会科見学でその場面を見た事があるが。
……人に交じって一本足の目玉が作業をしている
幼い私にとっては史上最大のカルチャーショックだった。
このように妖達は私達人間とうまく共存出来ているものがほとんどだ。
しかし、何事にも例外はあるようで、妖の中には私達に危害を加えるものもいる。
昨日のあの黒い塊などは、学校内で肝試ししていた生徒六人を食い散らかし、その上見回りにきた教師まで喰ってしまおうと待ち伏せまでしていたのだ。
そういう妖は取り締まらなければならない。
だが厄介なことに、妖達は仲間の処罰をとことん渋る。
どうやら彼らの中では"仲間に手を下す"ということは最大のタブーらしいのだ。
かといって普通の人間にはその姿は見えず、捕まえるのは非常に困難となる。
じゃあどうするか。
人と妖の血が混ざった、私達がその役割を引き受けるのだ。
諸事情により書きためて書きためて一気に投稿する事になるので、ご了承下さい。