第一話 始まり
「近寄るな!人間!」
小さな黒い塊が悲鳴のように絶叫する。
のっぺりとした顔に木の実のような目がぽつぽつと付いていて、異形の者だということを示していた。
スッ…とその目に1人の少女が映る。
「…そーゆーわけにもいかないのよねー。」
塊の7メートル前、少女がにたりと笑った。
長く伸ばした黒髪と、切れ長の目。
一見小学生にも見えるような小柄な体に幼女のような高い声。
そして、そんな彼女の姿にそぐわない、真黒な刀がその手に握られている。
「わ、私が何をしたというのだ!私は、何も――――――――」
「しらばっくれる気?あんだけの事しといて?」
少女がケタケタと笑い、刀でビシッと黒い塊を威圧するように示した。
そして、今までとは打って変わった低い声で宣告するように言い放つ。
「6月25日、午前3時53分。煉桜高校西別棟、二階突き当たりの部屋。…ここまで聞いても分からない?」
黒い塊が「ひっ」と微かに悲鳴を上げ、少女に縋りつくような声で命乞いを始めた。
どうやら塊にも口というものはあるらしく、パカパカと開閉する空間の中は赤かった。
しかしすぐに少女に一蹴りされ、部屋の隅へごろごろボールのように転がる。
「ぎゃあっ」と叫び、塊は壁にぶつかって止まった。その塊の逃げ場をなくすように少女が立ち、蔑みの目で塊を見つめた次の瞬間。
少女が、別人のように怒鳴り始めた。
「いい加減覚悟決めろってんだよ!!人に危害加えた妖は消える掟なんだ!…手前ぇ、あんな事しといて生きてられると思ってんのかぁ?バカじゃねぇの…
人を喰っておいてよぉ!!」
少女の手に握られた刀がチャキッと音を立て、屠るべき相手を狙う。
少女の目つきが変わり、完全に殺人鬼のそれとなった。
微かに茶色がかった虹彩から異様な輝きが溢れ出る。
その輝きは、残酷ながらも、どこか美しい。
「で、出来心だったんだ、腹が減って…ゆ、許してくれッ」
黒い塊の言葉が耳に入らないかのように少女はゆっくりと歩み寄り、そして。
「罪を、償え。その命で。」
刀を、塊に向かって振り下ろした。
拙い文章でごめんなさい。