国境なき軍隊と意思
霰降り鹿島の神を祈りつつ皇御軍に我れは来にしを
(現代語訳)
私の妻を絵に描き写す暇があればよいのに これから旅立つ私はそれを見ながら妻を偲ぼう
(作者/出典)
万葉集巻20-4327 物部古麻呂
防人歌
12月2日
0400
海上自衛隊護衛艦いずも
キャットウォークにて、オーバーロードといた。甲板には先に基地に帰投するために準備をしている俺達のAH-64Eが離陸準備をしていた。
オーバーロードはタバコに火をつける。一度吸って、吐くと空を見上げる。
背中を壁に身を任せていると、オーバーロードは急にこっちを見た。
「......ごめん。」
......は?
何を謝っているんだろうか。
「敵が接近していることに気づかなかった。」
「まだそれか。あれは俺にも非がある。それに、事前の偵察には車両の存在もなかった。依頼側の情報もミスだったということだ。衛星やドローンでも見つけられなかったんだ。それに、無人島に車両があるとは思えなかったしな。」
「......優しいのね。」
「今更か? 俺はそれよりも、世間が気になる。今回の作戦、まだ世間にはバレてないんだろ?」
民間軍事警備会社防人。国連軍や平和維持軍でもないが、国際連合安全保障理事会の一部という位置付けとなっている。命令/要請で行動するため、民間ではないという声もある。しかし、非政府組織で、利益は受け取る。国際的でもあり、民間の会社であるという地位で、なんとも言えない武装組織だ。
俺は、この防人の、世界から見てみて、どのように認識されているのかが気になる。
日本の自衛隊と同じだ。自衛隊は、軍隊ではない武装組織であると日本政府はしているが、世界から見ればどのように認識されているのか。
「私達の任務は確かに国際的には機密として闇に葬られることが多いわ。でも、誰かは見ている。それに、私達の基地はどこにある? 日本よ。世界でも有名な国よ。いい意味でも、悪い意味でもね。政府だけでなく、軍事とか政治に興味なくても一般人、マスコミといった日本中、世界中に見られている。色んな人が私達を見ていて、認識や評価をしている。それが、肯定的でも否定的でもね。でも、私はね。」
タバコを一度吸って、吐いてからもう一度話し始める。
「私は、何気ない日常が大好きなの。今みたいにタバコを吸ったり、あなたや皆と話をしたり。ご飯食べて、お酒飲んで、寝て。それを破壊するものは止めなければならないのよ。......私達は、国境なき軍隊よ。私はそう思うわ。」
オーバーロードが言ったことは、正直納得してしまった。
国境なき軍隊......か。国境なき医師団とは真逆の存在ではあるがな。
会社名にもある、防人。防人は古代日本で過酷で危険な任務において、日本を守っていたという。俺達の任務も、正直過酷で危険だ。死ねば、記録にも公には残らない。
「......。」
しばらく考えていると、周囲が明るくなる。日の出だ。
オーバーロードの髪がふさりと、海風でなびく。日の出も相まって綺麗に見えた。こいつは、案外美人だからな。優しい所もあれば正直な所もある。まぁ、言うならば、ガサツだ。
「ん? 見惚れた?」
「馬鹿言うな。」
「......海千。」
「ん?」
「これからもよろしく。」
「当たり前だよ、新井美郷。」
しばらく考えて、考えはまとまった。
そうだ。
俺は自らの意思で、立っている。
......俺達が手を汚して、多くを救う。
先人の防人の方々や、実際に今も世界で活躍する国境なき医師団には失礼だが、
俺達はそれぞれの考え方で、進んでいく。
それが、破滅だとしても。地獄だとしても。
死んだとしても。
初めまして、こんにちは。
『民間軍事警備会社 防人 ー自らの意思で彼らは戦うー』(以降防人シリーズと呼称)
前編の『特殊作戦』、この『国境なき軍隊』をご一読いただき、ありがとうございます。
民間軍事警備会社という組織が、戦う彼らが、世界が今後、どのような運命を辿るのか。
今後の活躍、喜怒哀楽......等々。お楽しみ下さい。
尚、今作は『民間軍事会社・自衛軍 〜現代に生きる影の防人〜』を改定したものです。予定では、このシリーズは終了となる可能性があります。
『青春と銃と』シリーズは今後も発展していきますので、ぜひこのシリーズもよろしくお願いします。
防人シリーズにおける軍事、政治、地理等は事実と異なる場合もあります。あくまでもフィクションですので、ご了承下さい。
今後もよろしくお願いします。




