五話:槍の騎士との出会い
「……さて、こいつはどうしましょう?殺しますか?それとも一生、奴隷としてこき使いましょうか?」
「いやいやいやいや!!できるかぁ!そんなこと!」
俺の手には口がない仮面の悪魔が、笑っていた。
男を倒した後、俺はペルソナを外した。すると、俺の着ていた黒のロングコートも黒い煙になって消えた。
まぁ、あの服はこいつの分身体らしいし、別に変なことではないよな。
「しかし、こいつはどうしようか?ていうか、この世界に警察みたいな組織ってあるのか?」
「まぁ、あるには、あるのですが……」
何やら、ペルソナが言うのをためらっている。こいつがこんなになるなんて……。
俺がこれからどうするかを考えていると。
「それなら、そいつは私が連れて行ってやろう。」
「うおっ!!だ……れ……」
咄嗟にペルソナをポケットに突っ込み、恐る恐る声のしたほうを振り向く。
俺は目に映った人物を見て絶句した。
……女性、それもただの女性じゃない。
まるで外国人のような流れるような長い青髪に整った顔立ち、目は透き通った青色の三白眼。
無表情の彼女は俺より高い身長と鋭い目つきも相まって、クールな雰囲気を身にまとっていた。
実際、見たところ彼女は大人のようなので、高校生の俺よりは年上なのだが。
彼女の身に着けている”それ”のせいで体型は分からないが、顔だけ見たら、その容姿はモデルも顔負けの美しさだった。
容姿の次に目に留まったのは彼女の身に着けている”それ”だった。
彼女の胸や腰、肩には青いドレスの上に黒色の光沢の金属製の鎧を身にまとい、彼女の背中には黒色の長い槍が携えられていた。
まさに、その姿はゲームに出てくるような美人の女騎士なのだが、実物を見てみると、彼女の気迫に押され、体が硬直していた。
はっ!もしかして、この状況じゃあ俺がこの男を一方的に殴ったと思われるのでは。
そう思った俺は必死になって弁明をしようとするが、緊張して声が出せない。
俺が声も出せずにパクパクしていると。
「突然武装した奴が声をかけてきたら驚くよな。すまない。私は決してお前を疑ってるわけではないから安心してくれ。」
「えっ?」
その一言で俺は驚きと安心で情けない声が漏れる。
しかし、男が襲ってきた方とはいえ、その男が気絶しているこの状況では、普通は俺が加害者だと思われても不思議じゃない。
「紹介が遅れていたな。私の名はカイ。国の警備隊に所属している騎士だ。この男は前から人を脅して金品を奪うという噂があってな。顔は割れていたのだが、なかなか尻尾を見せなくてな。」
「な、なるほど。それで……。って!警備隊!?」
見た目からただ者じゃないとは思っていたが、まさか警備隊とは。
ゲームの中において、警備隊は国の平和を守る王国直属の防衛集団だったはず。
この世界でも同じなら、この人かなり強いのでは?
俺が心の中で納得していると。
「それにしても、お前の着ている服は見たことがないのだが、もしや、旅の者か?」
「あ、あぁ~。まぁ、そんなとこです。」
……噓をついてしまった。しかし、ここで俺が転生者だということを言っても、頭のおかしい奴と思われるだけだ。
それなら、ここでこの街のことについて教えてもらう方がいいだろう。
幸い、彼女は国の警備隊と言っている、この街についても何か知っているだろう。
「あ、あの!もしよかったら、ギルドの場所を教えてくれませんか?俺、冒険者になりたいんですが。」
「ん?あぁ、冒険者登録をしに来たのか。それなら、ついて来い。ギルドは私の事務所の隣だからな。こいつを連れていく、ついでに手続きのことを教えてやろう。」
おっ!この人、もしかしてめちゃくちゃいい人か?見知らぬ俺にここまでしてくれるなんて。
この世界にはギルド自体はあるみたいだな。しかし、まじで、ゲームみたいな世界だな。
カイは気絶している男を轢きづりながら歩き出す。
俺はその後ろをついていくと、難なく路地裏を抜け、さっきほど見た人通りのある道に戻った。
「それにしても、大の大人を一人で倒すとは、お前なかなか強いんだな。どうだ?私の部隊に加入してみないか?」
「いや~。俺はまだまだですし、何より冒険者になりたいので。」
……ペルソナのことは一応、黙っていよう。もし悪魔と契約してるなんて知られたら、即刻首を飛ばされるかもしれない。
せっかく生き残ったのに、反逆者エンドだけは避けたい。
俺は適当に理由をつけて断ることにした。
「さて、ここが私の事務所”第八防衛アストラ騎士団”だ。そして、その隣がギルドだ。」
「これが、ギルド……。」
そこには、石レンガで造られた建物とレンガと木で造られた大きな建物が並んでいた。