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黒幕の正体
漆黒の奔流が戦場を覆い、仲間たちの記憶を消し去ろうとする中──
秋は必死に光翼を展開し、仲間を守り抜いた。
だがその直後、黒幕の身体を覆う鎖のようなコードが音を立ててほどけ始める。
その内側から、かつて見知ったはずの“人の面影”が現れた。
「……まさか、そんな……」
片瀬が呟く。
現れた顔に、秋の胸が強く締め付けられる。
それは──かつて学園で失われた先輩であり、記録研究の第一人者、榊先生だった。
「先生……!? どうして……」
秋の声は震えていた。
榊は、かつて“未来技術の研究”に身を捧げた人物。
だが事故で命を落としたとされ、学園でも記録から抹消されていた存在だ。
「秋……お前が守ろうとする記憶、そのすべてを私は受け継いでいる。
だが人は記憶に縛られる。ならば私は、すべてを消して“真の未来”を創る」
榊の眼はすでに人のものではなく、無数のデータの海を映す冷たい鏡。
彼自身が人と機械の境界を越え、記録の亡霊へと変わり果てていた。
「黒幕の正体……榊先生……? 私たちの未来のために研究していたはずなのに……」
秋の頬を涙が伝う。
榊は静かに笑う。
「未来のためだ。だが、その未来に“君たち”は必要ない」
そして再び、黒幕の影が戦場を覆い始める。




