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ライバルの影
翌日の訓練場。
秋とレディが準備をしていると、背後から鋭い声が飛んできた。
「おい、一条。昨日の模擬戦の負け、忘れてねぇだろうな」
振り返ると、秋と同じクラスのライバルペア――
冷静沈着な剣士候補の神城蓮と、青い瞳の女性型アンドロイドエリスが立っていた。
彼らはいつもトップクラスの成績で、秋たちにとっては正反対の存在。
「な、なんだよ急に……」
「上からの命令だ」蓮は冷たく笑った。「お前らに“再戦”を申し込めってな」
「命令……?」秋は眉をひそめる。
エリスは無表情のまま一歩前に出た。だが、その青い瞳は秋ではなくレディをまっすぐに見据えていた。
「ロイド-02。あなたの行動に異常値が検出されています」
「……!」レディの赤い瞳がわずかに揺れる。
「学院は、あなたを監視対象に設定しました。従わなければ――強制的に制御します」
空気が張り詰めた。
秋は思わず一歩前へ出る。
「待って! レディは異常なんかじゃない! 私の、大切な仲間だ!」
「……秋」
レディの表情がほんの一瞬、かすかに緩む。
その変化を、エリスの冷たい瞳は逃さなかった。
「感情の芽生え――やはり確定ですね」
剣を構える蓮。
対峙する二組のペア。
監視の影は、ついに“戦い”という形で牙を剥こうとしていた。




