姉の面影
休日の午後、学院の中庭。
秋とレディは芝生に座り込み、買ったばかりのアイスを頬張っていた。
「んーっ、冷たいっ。やっぱり暑い日はこれに限る!」
秋が笑顔でスプーンを口に運ぶと、レディも真似をしてアイスをすくう。
「……甘い。だが、すぐに溶けてしまう」
「そういうものなんだよ。だからこそ美味しいんだよね」
夕日が少しずつ傾き、風が柔らかく吹き抜ける。
そのとき、不意に秋は口にしてしまった。
「……なんかさ、レディといると――」
「?」
「――お姉ちゃんと一緒にいるみたいで、楽しいんだ」
言った瞬間、胸がぎゅっと締めつけられた。
忘れようとしても、ずっと消えない記憶。事故で失った、大好きな姉の笑顔。
「……秋。私は、あなたの姉ではない」
レディの声は静かだった。
けれど、次の言葉はどこか柔らかさを帯びていた。
「だが――もし、それであなたが笑えるのなら。私は、その役目を果たしても構わない」
秋は目を丸くして、それから少し泣き笑いのような顔で答えた。
「……ありがと、レディ。やっぱり君がいてくれてよかった」
◇
その様子を、校舎の窓からひとりの研究員が見つめていた。
手元の端末に打ち込まれたメモにはこう記される。
――対象:一条秋。レディとの親和性、予測を超えて上昇中。
――危険因子としての可能性、増大。
夕焼けの中、姉妹のように寄り添う二人。
だが、その影には確かに監視の気配が忍び寄っていた。




