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監視の影
「レディ、こっちこっち!」
秋は食堂の隅の席で、トレーを手招きする。
以前は食事を“燃料補給”としか考えなかったロイド――いや、レディが、今では普通の生徒のようにスプーンを手にしている。
赤い瞳でカレーを見つめながら、慎重にひと口。
「……辛い。だが、不思議ともう一口食べたくなる」
「でしょ? 学食のカレーはクセになるんだよ」
そんな些細なやりとりが、秋には嬉しかった。
もう“相棒”を超えて、彼女と“友達”になっていける気がして。
だが――その様子を、遠くから冷たい視線が見つめていた。
◇
学院研究棟、モニタールーム。
スクリーンには食堂の映像が映し出されている。
そこに映るのは、笑顔を見せる秋と、柔らかな表情を浮かべるレディ。
「……あの個体、プログラム外の反応を示し始めていますね」
「自我の芽生えか。早すぎる」
「一条秋との接触が原因でしょう」
研究員たちの低い声が交わされる。
一枚のファイルが机に置かれる。そこには赤字で大きく記されていた。
――観察対象:ロイド-02(通称レディ)。
――危険度:要警戒。
◇
「秋、どうした? さっきから黙って」
「ううん、なんでもないよ」
ただの食堂のひととき。
けれど、秋の胸の奥にはかすかなざわめきがあった。
それが「監視の影」によるものだと、まだ知る由もなかった。




