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クロエの声…。
冷たく光を失っていたクロエのコア。
しかし――ある夜、秋がふと触れた瞬間、微かな脈動のような震えが伝わってきた。
「……っ!? 今、動いた……?」
秋の指先から、かすかな電流のような感覚が走る。
レディも目を細め、身を乗り出す。
「待って……秋、耳を澄まして」
――カタ……カタ……。
金属音とも心音ともつかない微かなリズムが、二人の鼓膜に直接響いた。
そして、空気が震えるように、コアの奥から**“声”**が流れ出す。
『……アキ……レディ……きこえますか……』
「っ!」秋は息を呑む。
「今、確かに……クロエの声……」
レディもまた、瞳を揺らした。
「でも……このコアには外部回路も電源もないはず……これは、記憶の残響……?」
声は微弱で、途切れ途切れにしか聞こえない。
それでも確かに、そこには想いがあった。
『……私は……まだ……終わっていない……』
秋とレディは、互いに見つめ合う。
不気味さと同時に――新たな可能性の予感。
クロエは、記憶を超えて「生きて」いた。
そしてその声は、これから始まる新たな試練を予告するかのように、夜の静寂に響き渡っていた。




