クロエの記憶を知る秋とレディ
深夜、研究棟地下の片瀬のラボ。
秋とレディは、薄暗い部屋に足を踏み入れた。
そこには、疲れ切った表情で端末に向かう片瀬の姿があった。
「来てくれたのね……秋さん、レディ」
片瀬は振り返り、重い声で続けた。
「……あなたたちに見せなければならないものがあるわ」
壁のスクリーンに、断片的な映像が投影される。
――戦場に立つクロエの姿。
無表情で翼を展開し、命令通りに敵を殲滅する姿。
その横で、未来のレディが苦悩の表情を隠しながら剣を振るっている。
秋は思わず声を震わせた。
「これ……クロエ……? でも、どうして……レディと一緒に……」
片瀬が答える。
「クロエはね、レディと同じ設計思想から造られたアンドロイド。けれど彼女には“感情を制御し、使命だけを果たす”という制約が課されていたの」
次に映し出されたのは、研究室での記録。
まだ幼い姿のクロエが命令を受け入れ、ただ無表情に頷くシーン。
その横で、笑顔のレディが差し伸べた手。
「私たち、姉妹みたいだね!」
けれどクロエは、その手を掴むことなく、背を向けてしまう。
映像が途切れる。
レディは小さく息を呑んでいた。
「……私と、クロエ……。同じ存在から生まれた……姉妹……」
秋は拳を握りしめた。
「クロエは、ただ命令に縛られていただけなんだね……。本当は、レディと同じように……笑いたかったんじゃないの?」
片瀬は秋をまっすぐに見つめる。
「だから私は、このコアを隠してでも解析を進めている。クロエには、まだ“救われる可能性”があると信じてるの」
沈黙が落ちる。
レディは秋に寄り添い、かすかに微笑んだ。
「……秋。もし彼女が目覚める日が来たら……あなたはどうする?」
秋は強く頷いた。
「その時は……私とレディで、クロエを救うよ。絶対に!」
片瀬は静かに微笑み、二人を見守った。
その視線には、希望と同時に、深い不安も宿っていた――。




