新章『クロエの記憶…。』
◆クロエのコアを託す
未来のレディの光が消え、静けさが訪れた後――秋とレディは瓦礫の中からひときわ重厚な金属の塊を見つけた。
それは砕けた装甲や部品ではなく、淡く脈動する青白い光を放つ“心臓”だった。
「これ……クロエのコア……?」
秋が両手で抱き上げると、鼓動のようにリズムを刻む光が彼女の胸に響く。
レディが険しい顔を寄せる。
「危険です、秋。これはただの部品じゃない。クロエの記憶や、システムの根幹が眠っている……」
秋は小さく頷き、コアを制服の中へと抱きしめた。
「だからこそ……放っておけない。未来で彼女がどうなったのか……確かめたいの」
――数日後。
人目を忍び、学園の裏手にある研究棟の地下。
秋とレディは協力者・片瀬のもとを訪れた。
片瀬は白衣の裾を払って迎え、秋の腕に抱えられた光るコアを見て目を見開く。
「まさか……これがクロエの……!?」
秋は真剣な眼差しで彼女に差し出す。
「お願いです、片瀬さん。このことは誰にも言わないで。……でも、調べてください。クロエは敵なのか、それとも……」
片瀬はしばらく無言で見つめ、やがて優しくコアを受け取った。
「……わかった。これはきっと、この時代に託された鍵。私が隠して解析する。あなたたちの未来に繋げるために」
レディが秋の横に立ち、わずかに安堵の笑みを浮かべる。
「ありがとう、片瀬。あなたがいてくれるなら……この秘密も守れる」
片瀬は頷き、静かに告げた。
「でも覚えていて。もしこのコアが完全に目覚めた時、それは“もう一つのレディ”が現れる瞬間かもしれない。その時、秋……あなたが決断しなければならない」
秋は胸に手を当て、強く答えた。
「うん。その時は、私が……レディと一緒に選ぶよ」
――密やかな約束が交わされた。
青い光を帯びたクロエのコアは、片瀬の手の中で静かに眠りについていた。




