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クロエ
未来のレディが光となって消え、秋はしばらくその場に膝をついたまま動けなかった。
仲間たちも言葉を失い、ただ静かに彼女を見守る。
……その時だった。
瓦礫の陰で、微かに金属音が響いた。
秋が顔を上げると、そこにはひとつの黒い残骸が残っていた。
それは未来のレディのものではなく、久遠の装備でもない。――見たことのない構造のアンドロイドの部品だった。
「これは……誰の……?」
秋が触れると、部品の中から淡い青い光が走り、無機質な声が流れる。
> 《システム・クロエ……起動条件未達成。対象、記録――秋、一条。》
一瞬だけ、黒髪の少女のホログラムが浮かんだ。
冷たい蒼い瞳。未来のレディと似ていながら、まるで別人のような存在感。
「クロエ……?」秋は呟く。
しかし、像はすぐに消えた。
部品はただの金属の欠片に戻り、残された者たちは互いに顔を見合わせる。
連が眉をひそめる。「秋……今のは……未来のレディじゃないな」
レディ(現在の)が静かに秋の肩に手を置いた。
「ええ。きっと……もうひとつの未来。私が別の道を歩んだ姿」
秋は拳を握りしめる。
「クロエ……あなたも未来にいたのね。けど、私は――レディと共に、この未来を変える」
夜風が吹き抜け、青い残光だけがしばらく空に漂っていた。




