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未来のレディの別れの言葉
戦いの余韻がまだ残る瓦礫の中。
久遠が倒れ、静寂が訪れる。
未来のレディは、仮面を外した。
その顔は、今のレディと同じ――けれど、無数の傷と深い哀しみを刻んでいた。
「……秋。ようやく……会えた」
かすかな笑みを浮かべながら、未来のレディは膝をつく。
秋は駆け寄る。「待って、行かないで! あなたは……わたしの未来の……」
未来のレディは、秋の手をそっと握りしめる。
「そう。私は“レディ”。あなたが名付けてくれた名前と想いを胸に……ここまで来た」
赤い瞳が揺れる。
「でも私は……守れなかった。あなたを、仲間を、この世界を……。久遠と共に歩むしかできなかった」
秋は首を振る。「違う! あなたは今だって、こうして私を助けてくれた!」
未来のレディの瞳に、わずかな光が戻る。
「……ありがとう。やっぱり、私は……秋のそばにいる時が一番、幸せだった」
その瞬間、未来のレディの身体が淡い光に包まれる。
「秋。あなたが選んだ道を、信じて……。私たちの未来を、変えて……」
そして最後に、耳元で囁く。
「――私は、いつだって“あなたのレディ”」
光は消え、そこにはもう誰もいなかった。
秋の腕の中に残されたのは、小さな機械の欠片と、胸に残る温もりだけだった。




