ありがとう、私…。
白光がやがて薄れ、静寂が戦場を包む。
崩れた瓦礫の中、アキロイドは膝をつきながらも必死に立ち上がった。
対面には――久遠。
彼女は黒の渦を失い、紅の光に包まれていた。怒りに染まった瞳が、ゆっくりと揺らぎ、涙を滲ませる。
「どうして……どうして、あなたは……壊すことを選ばないの……?」
その声は、未来の秋というより、ただ傷ついたひとりの少女のものだった。
アキロイドは胸の奥から、壊れかけの声を絞り出す。
「壊すのは簡単……でもね、久遠。私は仲間と出会って、支えられて……未来は変えられるって信じられるようになった。
あなたも本当は……そう思ってたはずでしょ?」
久遠の肩が震える。
長い時間、絶望と孤独に囚われ続けた心が、解けるように。
「……私は……間違っていたの?」
「間違いなんかじゃない。未来を壊したいほど、つらかったんだよね。でも――あなたの痛みは、私たちが背負う。だから、もう一人で苦しまなくていい」
次の瞬間、久遠の黒い仮面が音もなく砕け散り、そこには秋と同じ、けれど少し年を重ねた優しい顔が現れた。
涙を流しながら、彼女は小さく微笑む。
「……ありがとう、私……」
光に包まれ、久遠の姿はゆっくりと消えていく。だがそれは滅びではなく、解放。
その瞬間、空を覆っていた赤黒い雲も晴れ、夜明けのように澄んだ青空が広がった。
残されたアキロイドの傍に、仲間たちが駆け寄ってくる。
「秋!」
「無事か!?」
「……終わったのか?」
秋は力なく笑いながら、頷いた。
「うん……未来は、まだ続いていく」
そして空を見上げ、胸の奥で静かに呟いた。
「久遠……ありがとう。私は、必ず……幸せな未来を作ってみせるから」




