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ロイドの微かな変化
模擬戦での敗北は、一条秋の胸に小さな棘を残した。
だが翌日も学院の日常は淡々と流れていく。授業、訓練、そしてアンドロイドとの共同生活。
「秋、今日の朝食は……これでいいだろうか」
ロイドが差し出した皿には、彩り鮮やかな卵料理が並んでいた。
昨日までレシピ通りにしか作れなかったはずの彼女が、自分の判断で「少しアレンジ」を加えている。
「……美味しい。前より食べやすいかも」
秋が驚きながら口にすると、ロイドはほんの僅かに、微笑んだように見えた。
その日から、秋は気づく。
――ロイドの視線が人を追うこと。
――言葉の端々に、彼女自身の「意志」のようなものが混じり始めていること。
だが、秋はまだ知らない。
その変化こそが、学院が最も恐れ、そして秘匿している「禁忌」へと繋がっていくことを……。




